息子である「僕」が、お父さんとのなにげない日常や、親孝行をテーマにしたコンテンツを投稿するYouTubeチャンネル「親子バラエティ」は、「有名になりたい!」というお父さんの夢をかなえるために始まったそう。家族の仲睦まじい様子や、大胆な“親孝行”が大人気で、登録者数は60万人を超えています。ここでは、「僕」のはじめての親孝行エピソードを、息子と父親それぞれの視点から紹介します。
※ この記事は『お父さんの夢を叶えたら家族が愛で溢れました』(KADOKAWA刊)より一部抜粋、再構成の上作成しております。
すべての画像を見る(全4枚)息子の場合:高校2年のとき親孝行にハマった
僕の初めての親孝行は高校2年のときです。僕は小学生時代から動画投稿でお金を稼いでいて、母の管理のもとで貯めていました。高校生になると、なんだかんだやりたいことをやらせてもらいつつ、ここまで育ててくれた両親への感謝の気持ちが芽生え、「このお金をいつか家族のために使いたい」という願いを抱くようになっていました。
当時、僕の家では、毎年お盆にお墓参りをしたあと、祖母を含めて家族みんなで食事をするのが恒例でした。「家族においしいものをごちそうしたい」そう思った僕は、地域でもおいしいと有名な回転すし店に行こうと提案しました。
僕たち家族には、外食をするという習慣がありませんでした。ときどき父や兄とラーメン屋さんに行くことはあったけれど、なにげなく晩ごはんをファミレスで…なんてことはしたことがありません。
わが家では、外食は“ぜいたく”です。それに、母がつくる料理はとてもおいしいので、家で食べるごはんにみんな満足していました。だから家族でおすし屋さんに行くことなんて、物心がついてからは初めてのことです。
●「おいしいものを食べさせたい」それは子どもも同じ
「なんでも好きなものを食べて」。席に着くなり僕は気前よく家族に促しますが、家族はメニューを見て戸惑っていたようでした。というのも“回転すし”ではありますが、一皿でワンコインをはるかに超えるネタもある、それなりのおすし屋さんだったからです。
「このネタひと皿と一杯のラーメンが同じくらいの値段…。ラーメンならおなかいっぱいになるよな…」という感覚が共通しているわが家なので、「高…」と気おくれしてしまうのも仕方のないこと。みんな遠慮しているのか、注文がまったく進みません。だれもなにも頼まないまま、オーダー用のタッチパネルのスクロールだけがただただ進み、もう3周は回っていました。
僕が口火をきらなければ。とりあえず、その日のおすすめになっていた中トロやハマチ、サーモンなどを注文しました。「これでラーメン何杯分かな…」という思いはよぎったけど、振り払いました。今日は家族におなかいっぱいおすしを食べてもらいたいから。
そんななか、父は「俺はシメサバが好きだから」と100円のシメサバを注文しました。テーブルに届いた中トロを父にすすめると、「俺はいいからおまえ食えよ」といつもの調子。子どもにいちばんおいしいものを食べさせたい親の気持ちを、僕もいつか感じるのだろうかと思いつつ、僕だって父においしいものを食べてもらいたい気持ちは負けない。「お父さんに食べてほしいの!」と半ば押しつけるように渡すと、父はやっと手を伸ばしました。
「うめぇーー!」父の声は、店内じゅうとは言いませんが、多分両隣のテーブルくらいまでは響き渡ったと思います。お父さんの満面の笑顔は、僕を高揚感にひたらせるのに十分すぎるものでした。