荒れる思春期の娘とのリアルなけんか

渡辺満里奈さん
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――お子さんは現在17歳と14歳で思春期真っ只中ですよね。著書では、娘さんとの関係が少し難しい時期もあったと書かれていますが、具体的にどのようなことがあったのでしょうか?

渡辺:娘が小学校高学年だった頃、新型コロナウイルスの影響で授業がオンラインにきり替わりました。突然慣れない環境に置かれ、友達とも会えなくなってしまい、本人も人間関係や距離感に戸惑い、混乱していたと思います。

その状況がしばらく続き、学校に戻ることになりましたが、多分、戻った先は娘にとって、自分の居場所や過ごし方が以前とはまったく違うものになっていたのかな…。思春期という多感な時期に、そうした社会的な変化にぶつかってしまったことで、「学校に行きたくない」と言い出してすごく荒れた時期があったんですよね。

――あの時期は、不慣れな状況にだれもがストレスを感じていましたよね…。当時はどのように娘さんと向き合い、対応されていたのですか?

渡辺:最初は遅れをとることが心配だったので、「勉強しなさい」とか、「これをやりなさい、あれをやりなさい」と次々に指示していました。でも、それが逆効果でしたね…。

私が彼女をコントロールしようとするほど、状況は悪化して。「宿題やったの? どうせやってないでしょ」といった言葉をつい口にしてしまい、娘からは「どうしてそんなに信用してくれないの?」と猛反発されることもありました。

それに加えて、娘が家族の中でいちばん年下なので、「自分の話なんてだれも聞いてくれない」と感じていたみたいなんです。私は彼女の地雷を踏んでしまったと思って、「ごめんね、ごめんごめん」と謝ってその場を収めようとしましたが、当然そんなことでは許してもらえなくて。

娘が怒りや反発でワーッと言ってくると、私もつい構えて言い返してしまうことがありました。そうなると本当に修羅場ですよね…。毎日泣いて過ごした時期もあり、今振り返っても本当に大変でした。

手放したのは「コントロールしよう」とする気持ち

――では、そこからどうやって乗り越えていったのでしょうか?

渡辺:私がまず変えたのは、子どもをコントロールしようとする気持ちを手放すことでした。こっちが「勉強しなさい」って言ってやるようだったら、もうとっくの昔にやっていたはず。それだけ長いことけんかを続けてきたので…。

だから「勉強しなさい!」というのをやめました。それをきっかけに、娘にもすごく変化が現れ、親子関係が改善されていきましたね。「信頼されている」と娘自身も感じるようになったのかな? 私も、娘の話もちゃんと聞くようにして、途中で話を遮(さえぎ)ってしまうのも我慢するようにしました。

――指示することをやめたことで、不安になることはありませんか?

渡辺:もちろん、不安なことは今でもありますし、まだどうなるのかわかりません。でも、こればっかりは思春期のときに力ずくでやらせようと思ってもできない。

突き放すように聞こえるかもしれませんが、「あなたの人生はあなたのものだ」という話はしています。ただ、助けを求められたときはいつでもサポートするし、提案もするということも同時に伝えています。そうしたら、すごくお互いラクになりましたね。

――ちなみに、長男の息子さん(17歳)の方はいかがでしたか?

渡辺:息子は娘とは異なり、比較的言葉を飲み込むタイプですね。自分の感情をあまり表に出さず、父親にも強く主張することはありません。一方で、娘は父親にもどんどん食ってかかるタイプなんですよね。お兄ちゃんは「ちょっと我慢しすぎなんじゃないかな…」と、逆に心配になることもありますね。

子育ての悩みも自然体で語ってくれた渡辺満里奈さん。思春期の子どもたちと向き合う葛藤を乗り越えながら自分自身もアップデートして、穏やかかつアグレッシブに50代以降を歩む姿を見せてくれました。

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