科学的根拠に基づいた「アクティブリコール」

安川先生が推奨するのは「アクティブリコール(Active recall)」と呼ばれる勉強法です。アクティブリコールとは「勉強したことや覚えたいことを、能動的に思い出し、記憶から引き出す」こと。

一般的にはインプットの量で学習を評価してしまいがちですが、じつはこの“インプットだけ”の勉強は、科学的に効率が悪い方法。一方、アウトプット(思い出す作業)することは、記憶を長期に定着させる効果的な勉強法です。

高校時代の安川先生はこれを自然と行っていたそうですが、きっかけを伺うと、「いつからやるようになったかは明確に覚えてない…」と前置きしつつも、記憶をたどり、ある出来事を話してくれました。

「医学部に入ると勉強して覚えなければいけない量が急激に増える。それこそ3年生の新学期に大きな解剖学の試験があって、100人ちょっと学生がいて、半分の50人ぐらいの学生がその試験に落ちるんですよ。本来ならば新年度が始まる前の春休みに勉強するのが理にかなっているのですが、僕はそのときにどうしてもインドに行きたかったんです…」

てっきりインドで猛勉強! するかと思いきや、安川先生は必要最低限のページだけを持ち、旅行に出かけました。

「バックパック旅行だったのでそこまで荷物を持って行けない。だから本当に大切なページだけをコピーして持参し、旅行中のすき間時間に白紙に覚えていることを書き出すみたいな勉強をしていました」

そして試験の2日前に日本に帰国し、試験の結果は余裕をもって合格! 安川先生は、この経験から“アクティブリコール”の方法はとても効果があると実感しました。

残りの医学部の試験もアウトプット中心の勉強を実践し、見事日本での医師試験に合格。さらには、アメリカの医師試験にも上位1%以内という高得点で合格しました。

経験的に効果を感じつつも、のちに学習に関する論文をたくさん読んだ結果、安川先生が行っていた方法は理にかなっていたことが判明。そこから多くの人に“アクティブリコール”の勉強法を紹介しています。

「アクティブリコールは時間をおいて繰り返すと、より高い学習効果が得られます。情報を積極的に思い出すことで、『この情報は大切だよ!』と自分の脳に言い聞かせ長期記憶として保管してもらう、そんなイメージです。だれでもすぐにマネできて効果が確認された勉強法なので、なにかを学びたいと思っているすべての方にぜひ読んでいただきたいですね」

このほかにも、『科学的根拠に基づく最高の勉強法』(KADOKAWA刊)には、ノートに書き写す・まとめる、下線を引くなど、じつは科学的に効果が高くない勉強法や、勉強にまつわる心・体・環境の整え方など、目からうろこの情報が満載です。ぜひチェックしてみてください。

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