変化のきっかけは「時短ワザ」「効率化」

考え方が変わるきっかけは、外資系メーカーで会社員として多忙を極めていたとき。

「11年前、長男の出産後には、家庭と仕事の両立のため、家電や時間術を駆使していました。そのおかげで時間を“効率よく”使うことはできるようになりましたが、次第に疑問を抱くようになってきたんです」

時短ワザで生み出した時間にさらにたくさんの仕事を詰め込む…会社員として当たり前にこなしていたサイクルが、本当にやりたいことなのか自問自答を繰り返すように。3年後に二男を出産し、働き続けながらも、モヤモヤはどんどん大きくなっていきました。

「育児をしながら出産前と同じようにがんばり続けることは、あとに続く、働く女性のためにならないんじゃないかという葛藤もありました。時間の使い方に、正面から向き合わなければ、このモヤモヤはずっと私自身につきまとうだろうと考え、キャリアを中断することを決意したのです」

そして、2020年に退職。次の仕事は決めず、2年間を「サバティカルタイム(長期間勤務した人に与えられる長期休暇)」として、自分自身と向き合う機会をもちました。

「すぐ消えちゃう時間」こそ大切に

子ども
日々成長し、興味の対象も移り変わっていく子どもたち。寺社を訪れたときに「願い事」を聞くと、意外な関心が知れることも
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その結果、「仕事」を第一に置いていた時間の優先順位が変わったと言います。今、尾石さんが、もっとも大事にしているのは家族と過ごす時間と、体を休める睡眠のための時間。

「思い返してみたら、子どもたちが2歳になる頃までの子育ての記憶がほとんどないんです。あのかわいい時期を覚えていないなんて…と後悔しました。親子で過ごせる時間は限りがあるもの。つい、仕事や家事のあと回しにしがちな時間だからこそ、意識して優先しています」

同じように、睡眠時間もあと回しになりやすいですが、休息をおろそかにすると、心身の調子を崩す原因に。

「消えてしまいがちな時間を確保するために、私は1日のスケジュールを大まかに決めています。お手本は敬愛する作家、村上春樹。午前中は執筆、午後はそのほかの仕事に充て、夕方には必ず終わらせます。数字にとらわれず、本当の意味で“効率よく”時間を使うためには、自分にとってなにが幸せかを知ることが、いちばん大事なのではないでしょうか」

Q&A 「時間使い」についての質問に答えます!

時間の使い方、自分らしく充実させるにはどうすればよいのでしょうか? 読者からの質問に尾石さんが答えます。

●Q.やりたいことが多くて、どれも中途半端になってしまいます。

A.「企画書」をつくると冷静に判断できるのでおすすめ

衝動的に行動していては、時間はいくらあってもたりないもの。「目的やコスト、実現可能性などを書き出してみると、自分にとって本当に必要なことなのか冷静に判断できます」

●Q.時間に追われず、余裕をもって過ごすには?

A.あらかじめ余裕があるスケジュールにするために自分なりのルールを決めて

尾石さんは、予定の前後15分はあける、大きな予定は日を分けるといったルールを実践。「家族と過ごす時間など、大切にしたい時間を先に予定に組み込むことも大事です」

●Q.なにに時間を使うべき? 自分のことがよくわからない

A.まずは客観的に観察日記をつけてみると、自分自身が見えてきます

やったことや食べたもの、買ったものなどをまずは1週間ほど記録。「疲れているときは買い物しがち、こういう時期に体調を崩す…など、行動のクセや好き嫌いがわかります」

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