日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。夫に「つき合っていたころと同じようには愛せない」と言われて絶望したという専業主婦の奈央さん(仮名・40代)のお話です。生まれ育った東京を離れて、初めての地方暮らしに翻弄された30代での新婚時代。夫と価値観や子づくりのタイミングの認識がズレた当時を振り返っていただきました。
すべての画像を見る(全4枚)江戸っ子娘が、結婚で地方に行ったら…
さっぱりしていて、家事も育児もチャキチャキっと手際よくこなす奈央さんは、おじいさんの代から両親ともに東京・神田で生まれ育っているという生粋の江戸っ子女性です。「東京以外の場所で暮らすことは想像もしていませんでした。結婚を機に東海地方の某市へ引っ越してからは、カルチャーショックの連続です」と笑顔で話します。
現在、結婚10年目。しかし、こんなに割りきって明るく暮らせるようになるまでは、さまざまな苦労があったそう。
「仕事で英語が必要だったので、社会人向けの語学学校に通っていたのですが、そのときに、同じクラスにいたのが夫でした。年齢は私の1歳上。夫は留学経験もあったから英語のレベルは私よりも断然上で、レッスン後によく勉強をみてもらったりしているうちにだんだん恋愛関係に発展していったんです。それから1年して、向こうが実家の家業を継ぐことに。私は寿退職して、一緒に実家の近くへ建てた新居へ移り住むことになりました」と奈央さん。
都内とは違う文化や環境の違い、そして独特な方言でのコミュニケーションにも苦労が絶えなかったといいます。
「夫の実家へはじめて顔合わせに出向いたとき、PASMOが使えなかったんです。当時は東海地方の交通系ICカードといえばICOCAでした。あぁ、私はPASMOが使えない異国の地へ踏み入れてしまった…って、もうそれだけでとても孤独な気分になりました」と当時を振り返る奈央さん。
「おまけに義理の実家では、初めのほうこそ私に気を使って共通語をしゃべってくれていましたが、お酒が入ってだんだん盛り上がったりしてくると、方言の連発。大阪弁とか京都弁みたいに、テレビとかで聞き慣れている方言とは違って、イントネーションも単語も聞きなれないものが多くて。なかなかなじめませんでした」
「この結婚自体が失敗?」私の夫のビフォーアフター
慣れない地方での暮らし。最初こそ右往左往する奈央さんを夫は優しくサポートしてくれましたが、それも結婚してからあっという間になくなってしまったといいます。
「東京にいたころは、美容室へ行けば『髪の色変えた? すごくかわいいね』とか、新しい服を着ると『奈央の雰囲気によく似合ってるよ』って、マメに言葉にしてほめてくれていたんですけれど、そういうのも、夫の地元に来てからまったくなくなってしまったんです。結婚したからかな…。釣った魚にはエサをやらないタイプでした」
なにより寂しかったのは、このころから夫婦の触れ合いも激減してしまったこと。
「結婚してから、夫の態度がガラリと変わってしまったので、この結婚自体が失敗だったのかなって悩んでいた時期でもありますね。家業を継ぐとなって、夫は夫で初めての職場でいろいろ大変だったのか、毎日『疲れた』を連発。夫婦生活の雰囲気は皆無でした」と奈央さん。
「新婚だから、周りから『今がいちばん楽しい時期だね』なんて言われたけれど、急激に冷めるのを感じていたので、そういう言葉にすら傷ついていました。仕方ないってわかっていても、自分の頭と心がなかなか追いつきませんでした」
そんななか、子どもをいつつくるかということで、夫婦間で意見が割れました。