年齢を重ねる中で、親の病気や介護の問題に直面する人も多いのではないでしょうか。ニッポン放送で長年放送している朝のラジオ番組「あさぼらけ」のパーソナリティを務める66歳の上柳昌彦さんも、数年前に当時70代後半だった母親の病気が発覚したそう。

仕事の合間をぬって母親が入所している介護施設に通う生活をしていたという上柳さん。先日上梓した『居場所は“心”にある』では、愛する母への想いを率直に綴っています。母親の介護と家族の温もりに関するエピソードをご紹介します。

実家でひとり暮らしをしていた母が弱っていく

上柳さん
上柳昌彦さん
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上柳さんの父親に末期の肺がんが発覚したのは、長年のサラリーマン生活を終え、これから夫婦二人の充実した時間が始まると思った矢先でした。

「母にとって夫を亡くした喪失感はかなりのものだったと思いますが、『私は悔いのないぐらいに看病だけはできた』と話していて、二人にとっては有意義な時間を過ごせたのかもしれません」

看病の末に父親が亡くなったことで、母親は大船の実家でひとり暮らしをすることになります。しかしその後、母の介護を考えなければ、と思う出来事が起きました。

「休まらない父の看病を終えた母には、ゆっくりとした時間を過ごして欲しいと思っていたのですが、その矢先に腰を痛めてしまったんです。買い物にも行けなくなったこともあり、2005年から妹が住むマンションの別室で暮らすことになりました」

パーキンソン病が、母から束の間の自由な時間を奪う

ひとり暮らしとはいえ、同じマンションに家族が住んでいるということは上柳さんにとって安心材料になったそう。痛めていた腰もよくなった母親は、元気にひとり暮らしを楽しんでいるように見えたといいます。しかし、病魔は突然やってきました。

「10年ほど前から首が前に垂れてきていて、70代後半にしてはなにかおかしいと感じました。病院でX線検査や血液検査など、いろんな検査をしたのですが、原因が見つかりません。いくつもの病院に診てもらい、やっと病名が判明。パーキンソン病とレビー小体型認知症でした」

パーキンソン病は、手足がスムーズに動かなくなり歩行障害が生まれる病気。また、レビー小体型認知症とは、主に幻覚や幻聴といった症状が出る病で、いるはずのない所に人がいたり、床のカーペットの模様が動いたりしているように見えるそう。

「週に一度は必ずマンションを訪れて母の様子を見るようにしていたのですが、日常生活の中で体を動かすことが次第に少なくなり、衰えていくのが目に見えて分かりました。妹も、子育てをしながら会社勤めをしていて、母の介護は負担が大きい。そこで、今から7年前に介護施設に入所することになりました」