●「なんとなくいる」という猫の心地よさ

猫
ますむらさんちの猫。左からハテナ、モン、コマ(Twitter:@masumurahiroshiより)
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――もともと猫は好きでも嫌いでもなかったというますむらさんが、やがてご自身でも多くの猫を家族に迎える愛猫家になったのはなぜでしょう。

ますむら:人がなにかをするとき、すべてにはっきりした理由があるわけじゃなくて、じつは「なんとなく」が重なっていることが多い。急にガツンときたわけじゃなくて、じわじわとだんだんかわいく思えてきたんです。猫の顔だって、冷静になってよく見るとけっこう怖いですよ(笑)。

――猫と一緒に暮らすようになって感じた、猫という生き物の魅力はどんなところですか?

ますむら:「猫というものは~」みたいに一概には言えないよね。今うちには3匹いるけど、ひとり遊びが好きな子とそうじゃない子、自分で網戸を開けて庭に出ていっちゃう子とそうはしない子、本当にみんな一人ひとり個性が違う。

一緒にいればいるほど、「猫は~」というふうにはくくれない。「この子はこうする」「あの子はしない」としか言えないですね。

――猫の気ままさに癒やされる、という人は多いようですが。

ますむら:たしかに、呼んでも来ないし、猫の「なんとなくいる」っていう感じは心地いいですね。今は猫を外飼いするのは危ないという時代だけど、うちは庭が広いからあちこちで勝手にコロコロしている。それを見ているといい景色だなと思うし、室内飼いで家の中に閉じこもっている猫を見ると、どうしてもちょっとかわいそうと思ってしまいます。

――現在は、『銀河鉄道の夜』の三度目の漫画化となる『銀河鉄道の夜・四次稿編』(風呂猫)を刊行中のますむらさん。今秋に最終第4巻が発売予定ですが、今後のご予定はありますか。

ますむら:7年半も描いていたから、しばらくなにも描く予定はありません。もともと僕は、のどかに暮らすのが好きな怠け者。好きなことだけをやれたらいいと思うタイプで、死ぬまで描こうとはあまり考えてなかった。今は庭いじりをしながら猫とゴロゴロして、夕方になったらもうお酒飲んで寝ちゃうという生活が、とてもいい感じなんです。

 

宮沢賢治と猫をこよなく愛するますむらさん。そんな彼が描くいきいきとした猫たちが繰り広げる賢治ワールドは、岩手県花巻市の宮沢賢治イーハトーブ館にて12月27日(水)まで開催中の「『銀河鉄道の夜 四次稿編』複製原画展~ますむらひろしの新たな挑戦~」でも味わうことができます。美しい複製原画を通して愛すべきますむらさんの世界観に触れてみるのもいいかもしれません。

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