●旅行先でもついつい食材を買っちゃう!
――現在とご実家でお父さまに対してお料理をつくっていたときとでは違いますか?
すべての画像を見る(全4枚)阿川:父はもっと厳しかったですから。食事のために1日があるっていう人でした。でも、それは私が全責任取っていたわけじゃなくて、母の助手としていたわけだから、大したことはなかったんです。
とはいえ、それこそ、朝起きてご飯を食べているときに、父から「おい佐和子、今日は何時に帰ってくる? 5時ぐらいか? よし、今日はなにかうまいものをつくってくれ」って言われるんですから、プレッシャーですよ。
だから、私が部活なんかで遅れて帰ってくるっていうのは不愉快なんです。さっさと帰ってきて母親の手伝いをしろ、俺にうまいものを食わせろ、と。なにが部活だ! ってなもんでしたね。
家を出てひとり暮らしになった頃は料理から解放されましたけど。だけど、私自身も食べることは好きなので、たとえば辛い原稿が終わったあとは、「よし、今日晩ご飯なに食べようかな?」とか考えます。原稿が上がってなにがうれしいって、スーパーに買い物に行けることなのよね。それで、つい買いすぎたりして腐らせるんですけどね(笑)。
――スーパーでの買い物が阿川さんにとっての喜びなんですね。
阿川:お魚ならあそことか、お肉ならあそことか、トラックで来てるお魚屋さんが昔はいたので、よく通ってたんだけど、どこ行っちゃったのかな? とかね。野菜はあそこ安いから行こう、とかそんな風に考えて巡ってます。
外国に旅行しても、ブランド街を歩くときは大して興奮しないんですが、市場に行った途端に生き生きしちゃうのよね。まだ外国にいるのに、やっぱり見ちゃうと生鮮食品が買いたくなるんですよ。買ってもしょうがないのにね(笑)。
市場で両方の手にカゴをぶら下げて、この肉買いたいとか、このハム買いたいとか、どんどん盛り上がってしまう。どこへ行っても、まずは市場に行きたい。それくらい食材の買い物は好きですね。
食への好奇心や探求心を笑顔で語ってくださった阿川さん。そのこだわりは、『母の味、だいたい伝授』でも多く書かれています。5月14日公開予定の中編では、阿川さんのアイデア料理の秘密やおうちごはんが好きな理由などお伺いしました! こちらの記事もぜひお楽しみに。