壁や建具で部屋同士を完全に仕切る間取りにしてしまうと、どうしても窮屈感や圧迫感が出てしまいます。ましてや、家がコンパクトとなれば、これは避けたいもの。そこで取り入れたいのが、ゆるやかに仕切られた間取りにすること。開放感が出るうえに、家族の気配が伝わるメリットがあります。一級建築士の青木律典さんが、自身の設計した事例を交えて解説。

サンルーム
リビングダイニングと隣り合うサンルーム。ゆるやかな仕切りにするため、建具にある仕掛けが
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ゆるやかに仕切ると、つながりや開放感が生まれます

キッチンとダイニングの様子

場所と場所の仕切り方を考えることは、つながりを考えることでもあります。こちらは、2階建て住宅の2階すべてをリビング、ダイニング、キッチンにした事例です。

キッチンとダイニングの間にあるのは、シンクのあるカウンター。この存在のおかげで、キッチンとダイニングが、さりげなく視覚的に分かれています。壁で視界をさえぎるように仕切るケースと異なることがわかるでしょうか。互いのつながりは残り、開放感があります。これが今回解説する、「ゆるやかに仕切る」ということ。

 

LDKの全景

ダイニングとリビングをゆるやかに仕切っているのは階段です(写真の手前側がリビングです。中央の木の腰壁で囲われた内側に階段があります)。階段室の腰壁の高さを調整して、ダイニングとリビングがさりげなく分かれつつ、同時につながりが生まれるように工夫しています。

 

階段室

コンパクトな家の場合、部屋同士を完全に区切らないことで、大きな空間として手に入れることができます。たとえばこの事例のように、LDKがひとつながりになるケース。広がりの感じられる家づくりがしやすくなります。また、採光や通風の面でも有利に。心地よさが、ぐっと増してきます。

 

床の段差や壁の色がゆるやかな仕切りに

図書コーナー

こちらの事例は、ダイニングの脇に、家族みんなが楽しむ図書コーナーを設けたケースです。図書コーナーはフローリングのダイニングと異なり畳敷きに。大きな本棚がつくりつけてあり、家族は思い思いにお気に入りの本を選んで、畳に寝転びながら本を読んだり、くつろいだりします。

 

図書コーナーとダイニングの境界

この図書コーナーとダイニングの間にも、間仕切り壁や建具はありません。かわりに、床のレベルを変えることで、あいまいに互いの領域が分かれています。図書コーナーの床はダイニングよりも1段下がり、天井の高さも低く抑えています。

加えて、壁の色にも変化をつけました。ダイニング側には白い壁。図書室の壁には濃い茶色に。これにより奥行きが感じられ、広がりが生まれました。

この事例では、段差や素材、色を変えることによって、「ゆるやかに仕切りながら、つながってもいる」状態をつくっています。ゆるやかなつながりなので、家族の行き来はとても自然で、カジュアル。そばにいながら、バラバラのことをしていることが、まるで当然であるかのような、自由な雰囲気のある空間になりました。