北京オリンピックで前人未踏の4回転アクセルに挑み、回転不足ながらもジャッジスコアに「4A」の文字を刻んだフィギュアスケートの羽生結弦選手。五輪3連覇はなりませんでしたが、最後まで気迫あふれる演技と有言実行の姿勢が、多くの人々に深い感動を与えました。その羽生選手のジャンプコーチであるジスラン・ブリアン氏が、このたび『フィギュアスケートLife』(扶桑社刊)の独占インタビューに応じてくれたので、その一部をご紹介します。
すべての画像を見る(全4枚)羽生結弦選手のジャンプコーチ、ジスラン・ブリアン氏独占インタビュー
コロナ禍の2年間、カナダのコーチたちの元に帰れず、一人で4回転アクセルの完成をめざしていた羽生選手をリモートで指導したブリアン氏。その指導方法はどのようなものだったのでしょうか?
●羽生選手の練習動画にコメントを返信
Zoomなどを使ってリアルタイムで指導するのとは違い、羽生選手から届いた練習動画にブリアン氏がコメントを返す形で、ジャンプの指導は行われました。
「ユヅの場合は彼から動画が送られてきて、僕がそれを分析して、気がついた点、直すべきだと思う点を記述式でテクスト(ショートメッセージ)の返信を送るんです。そして彼がそれを見て、次の練習で活かす。なにかわからない点があればユヅからメッセージが来て、やり取りをすることもあります。
(中略)
やっぱり実際に対面式でやるのとはまったくわけが違います。こう言うと変に思われるかも知れませんが、僕は『触るのが好き』なんです(笑)。スケーターを『手取り足取り』教えるのが僕のやり方です。腕はこう、腰はここ、足はここ、と位置づけをするんですよ。ちょうど彫刻を創る感じですかね。そうやって選手に僕のやってほしいことを伝えます。なのにユヅが、よりにもよってジャンプの中でいちばん難しい4Aを身につけようとしているときに、僕たちはすべてをバーチャルでやるしかなかったんです。
(中略)
でも、ユヅと練習するのは本当に楽しいです。彼は自分の身体を完全に知り尽くしているんですよ。彼と練習するようになってかれこれ8年目になりますが、僕の言うことをすぐわかってくれる。ここをもうちょっと速くして、これとこれをしっかりアラインさせて、とちょっとヒントを与えると、彼から『Got it(了解)』って返事が来ます。そういうプロセスでした」