「家族代々で墓を守っていく」という従来の考え方と異なり、永代供養や散骨などといった新しい供養の形が注目を集めています。
その一方、「ご遺骨の扱いが地域によって異なるため、感覚の違いをめぐってもめごとになることも」と語るのは、葬儀関連サービス企業でPRを務める高田綾佳さん。
今回は、葬儀の現場でよく聞かれる、遺骨に関する文化の違いから起こったトラブルについてのエピソードをご紹介します。
※写真はイメージです
こんなに文化が違うなんて!地域によって異なる供養文化
幸恵さん(仮名)は、40代の主婦。関東出身の父・関西出身の母の間に生まれ、ずっと関西近辺で生活しています。
長く患っていた父を亡くし、母が憔悴していたため、幸恵さんは喪主を引き受けることに。葬儀は問題なく終了し、荼毘に付すこととなりました。
亡くなった父の希望は「お墓には入れず、『永代供養(※1)』に出してほしい。手元供養などで多少は残していいが、なるべくこの世に骨を残さないでくれ」というもの。闘病中からたびたび聞かされていたため、幸恵さんと母はためらいなくその遺言に従いました。
遺骨の大半は近所のお寺に頼んで「合祀(※2)」してもらう一方、一部を「粉骨(※3)」にして、ペンダント型の「手元供養(※4)」向けジュエリーに小分けすることにしました。
関西は「部分収骨(※5)」する地域が多く、「全部収骨」する地域に比べ、遺骨は4分の1しか残りません。
永代供養と手元供養を終えると、手元に残ったのは小ビン1つに収まる程度の粉骨だけでした。
※1:永代供養…寺院や霊園に、一族ではなく一個人単位で遺骨の管理・供養を依頼する埋葬方法のこと。お墓の継承者がいなくても利用可能
※2:合祀…1つの大きなお墓に、他者の遺骨とまとめて収める方式。骨壺から取り出され他者の遺骨と混ざるため、故人ひとりの遺骨に対して拝むことはできなくなる
※3:粉骨…遺骨を粉砕し、パウダー状にすること
※4:手元供養…小型の遺骨用密閉容器や粉骨を収納できるペンダントに遺骨を納め、手の届くところで故人を供養すること
※5:部分収骨…荼毘に付したあとのお骨上げのとき、一部の骨だけを選んで拾い骨壺に収めること
父の親戚が激怒!永代供養や部分収骨は地域独自の「常識」!?
一周忌が近づいてきたある日、生前父と親しかった父のいとこ夫婦が関東からやってきました。
墓参りしたいという申し出に対し、お骨の大半は永代供養に出したこと、手元にはほぼお骨が残っていないことを伝えると、夫婦は「なんてことをしたんだ!」と怒りをあらわに。
「遺骨は全量受け取るものだから、納骨に出したとしても少しは取っておけるものだろう。お墓も立てず、手元にもほとんど取っておかず、本当に故人のことを大切に思っているのか?」というのです。
幸恵さんが「私たちが住む地域では部分集骨が当たり前で、永代供養はおかしくない、私と母は故人の遺志に従うことで故人を大事にしているのだ」と幸恵さんが伝えても、「うちの地域では聞いたこともない」と言うばかりで、まったく納得してもらえません。
「亡くなったお父さんには生前とてもお世話になったのに、故人に大変申し訳ないやり方で、理解できない!」と大げんかになり、最終的には「もう来ることはない」とまで言われてしまいました。
父が大事にしていたご縁が台なしになってしまい、幸恵さんは「これでよかったのだろうか?」と自問自答する日々が続いています。
お葬式・お墓の文化の違いから起きるトラブルを避けるためには?
このトラブルは、地域による文化の違いが大きく起因しています。
荼毘に付した後の遺骨の扱いは地域で大きく異なりますが、お墓及び供養に関する選択肢が多様になってきた最近までは、あまり表面化しなかったようです。
今回のようなトラブルになる前に、以下のことを心がけてみてはいかがでしょうか。
●ポイント1 離れた土地の葬儀・供養に関して疑問が生じたらまずは調べてみる
収骨量以外にも、遺体を荼毘に付すタイミングやお香典を受け取る続柄などで、地域差が出る場面はたくさんあります。
遺族はもちろん参列者として葬儀に参列する場合でも、疑問に思ったらまずは落ち着いて調べる、「私が住む地方ではこの場合こうするのだけれど?」と確認するなどして疑問を解消しましょう。
●ポイント2 故人の遺志を、親戚にあらかじめ伝えておく
永代供養や手元供養など、お墓という形にとらわれない供養の方法が徐々に広まっていますが、まだ一般的でないことも事実。
故人が従来のお墓以外での供養を望んでいた場合、手続きに移る前に、重要な関係者に説明しておくことで、不要なトラブルを避けられるかもしれません。
日本では家族にひもづく「家墓」がまだまだ一般的。トラブルを避けるためにも、葬儀やお墓について、ぜひ一度家族で会話をもってみてはいかがでしょうか。