手間ひまかかる洗濯の負担を極力軽減したい。そう考えて家づくりの計画をする方は多いでしょう。一方、洗濯スタイルは家族ごとに異なるもの。家族の洗濯スタイルを間取りとうまく合わせる、という視点も大切です。ランドリールームを設けるのがよいか、あるいは間取り全体で洗濯スペースを構成するのがよいか。そんな洗濯スタイルに応じた2通りの考え方について、建築家の新井崇文さんが、自身の設計した実例を交えて解説。家を建てる人、リフォームを考えている人は、ぜひ参考に。

洗濯物を畳む男性
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目次:

ランドリールームを設ける場合:物干しやアイロンがけスペースもある実例ランドリースペースなしの場合:間取り全体で洗濯家事をこなす実例結論、ライフタイルに合わせて間取りを考えるのが正解

ランドリールームを設ける場合:物干しやアイロンがけスペースもある実例

ランドリールームの全貌

ランドリールームとは「洗う・乾かす・アイロンをかける・たたむ・仕分けする」といった洗濯にまつわる作業をすべて1か所で行える空間。移動なく作業ができるため、家事の負担が減り、洗濯道具が家じゅうに散らかることも防げます。

上の写真は、ランドリールームが1階にある例。同じ階にLDK・洗面室・浴室がある、2階建てのお宅です。家事動線がよくなるようにプランしています。では、物干し場はというと…。

洗濯乾燥機

近年、花粉や黄砂、PM2.5といった外気のリスクが増し、年間を通して室内干しをしたいというニーズが増えています。そういったニーズを優先する家族には、ランドリールームで室内干しを行う洗濯スタイルを提案することに。

このお宅では、ランドリールームに物干し竿を設置し(写真右上参照)、換気扇・扇風機・除湿機などを併用して洗濯物を乾かします。もし必要長さ分の物干し竿を設置するスペースがない場合は、乾燥機を併用するという手段もあります。

洗濯機の横のアイロンがけスペース

洗濯機、乾燥機の左側に市販の棚を設置し、アイロンがけスペースを設けました。

洗濯物を仕分けるスペース

アイロン台の下にはたたんだ洗濯物を仕分けするケースを設置。あとは家族がそれぞれ自分の洗濯物をここから持ち出して、着替えたり、自分のクローゼットにしまったりするだけ。このように、洗濯にまつわる作業をすべてこのランドリールーム1か所に集約できる仕組みとなっています。

ランドリースペースなしの場合:間取り全体で洗濯家事をこなす実例

洗濯機があるだけの洗濯スペース

もうひとつの考え方を紹介しましょう。

「洗う・乾かす・アイロンをかける・たたむ・仕分けする」といった洗濯にまつわる作業を場所を分けて行う場合になります。たとえば、アイロンを掛けるのは寝室、たたんだり仕分けたりするのはリビングで…などといったパターン。作業を行う場所同士を結ぶ動線に配慮しながら、間取り全体で洗濯スペースを構成する、という考え方です。

洗濯機の様子

この2階建てのお宅では、洗面室・浴室・バルコニーがある2階で洗濯にまつわる作業が完結できる間取りとしました。2階で洗濯動線が完結することにより、洗濯後の濡れた重い洗濯物を階段で上下に運ぶ動作がなくてすみ、LDK周りに洗濯物や洗濯道具が散らかる心配もなくなります。

まずは洗濯機が設置された洗面室で「洗う」作業を行います。

バルコニーと外観の様子

洗い終わった洗濯物は同じ2階のバルコニーで「乾かす」作業へ。このお宅では野球とサッカーに打ち込む2人のお子さんがいるため、毎日の洗濯物はかなりの量になりますが、バルコニーの幅いっぱいに設置した物干し竿で大量の洗濯物を外干しすることができます。

眺めのよいバルコニー

外干しは天気に左右されるというデメリットがあります。そこで、このお家ではバルコニー全域に屋根をかけ、少しくらいの雨が降ってきても洗濯物を干し続けられるような配慮をしました。

洗濯物はお日さまで干したい、というニーズに答えたものですが、じつはこのバルコニーにはもうひとつの狙いが。「どうせやらなければならない家事」をできるだけ快適に行える仕組みを兼ねています。やはり、晴れた日のバルコニーからの眺めは気持ちのいいものですからね。

バルコニーを室内から見る

外干しを終えたら洗濯物をバルコニーから室内に取り込みます。

物干しスペースの様子

バルコニーから取り込んだ洗濯物は階段ホールの室内干しスペースにいったんかけられます。

階段ホールに設けられたカウンター

洗濯物をたたんだり仕分けしたりする作業は、この階段ホールに設けられたカウンターで。このカウンターは手すり壁上部の板を30cm幅にのばしたもので、アイロンがけもできるサイズになっています。

「こんな場所で?」と驚いた方もいるのでは。アイロンがけは部屋でやる、などという決まりはありません。この手法ならスペースを有効活用でき、しかも、やりやすい場所で家事ができることになります。

洗濯動線が2階のワンフロアで完結する間取り

あとは家族それぞれが自分のものをここから持って行くだけ。このように洗濯動線が2階のワンフロアで完結する間取りとなっています。

階段ホールでは窓から外の緑が見える

ちなみに、この階段ホールでは北側の窓から外の緑がきれいに見えます。おかげで、心地よさを感じながら、家事をすることができるのです。

結論、ライフタイルに合わせて間取りを考えるのが正解

廊下のカウンターで洗濯物をたたむ

洗濯は家事の中でも大きなウエイトを占めるもの。家族の洗濯スタイルと間取りを上手に合わせる、という視点は大切だと思います。ランドリールームを設ける、あるいは間取り全体で洗濯スペースを構成する…紹介した事例はあくまで一例です。家族それぞれの洗濯スタイルにピッタリの間取りがきっとあるはず。ぜひイメージをふくらませて考えてみてください。