●「生きる活動(生き活)」をしながら、がんサバイバーたちに伝えたいこと

腕を組む女性
がんサバイバーの坂元希美さん【撮影/幡野広志】
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医学や社会の進歩で、がんと診断されても自分も周りも動揺しないでよい世界になっていけば、長期間にわたってごく普通の生活を送るがんサバイバーたちが増えていくでしょう。

私が乳がんに罹患してから14年の間に、乳がんの治療やケアは医学的なエビデンスに基づいて変わったり進歩したものがたくさんあります。また、乳がんそれ自体にも違いがあり、人それぞれの違いもありますが、サバイバー人生は長く、多くのライフイベントを経験することになります。その中でがんという経験が「生きづらさ」になってしまうことを、少しでも減らせたらと思っています。

「キャンサーギフト」という言葉をご存じでしょうか? がんになって、新たに気づくことがあったり、思いがけない出会いがあったり、感謝する出来事が起きたりすることを「がんからの贈り物」と考えた言葉です。

私は、個人的にこの言葉がいまだに好きではありません。普通はもらえない贈り物をもらったって、「がんにならなかった」ことのほうがいいに違いないと思うから。
「もし、この体を返品できるなら、高額なキャンセル料だって払ってやる」と思うこともあります。

治療を終えてその影響も消えた7年目(2014年)に「これで普通の人と同じように、役に立てる」と献血に行ったのですが、がんの治療歴から断られて大ショックを受けたことがあります。
寛解後の年数を重ねても、簡単に落ち込んでしまうシーンは、私の日常の中に少なくありません。

私は普通の生活を「生きる活動(生き活)」だと思いながら、どうにかこうにか暮らしています。
もし、「ギフト」を得たのだとしたら、「ままならない状態で、どうやって生きていくか」について、自分独自の考え方や感じ方を大事にしようと思えたことかもしれません。
そして、2人に1人はがんに罹患する今、その思いや体験を伝えることがほかのがんサバイバーや、これからそうなるだれかの役に立てば…と願っています。