●不測の事態に備えて、日頃から猫友達やネットワークをもっておこう
「新型コロナの場合は家庭内感染も多く、家族全員が隔離対象となることも珍しくありません。そのため、信頼できるネコ友達やネットワークをつくっておくことがいかに大切かを実感した」と川上さん。
「もし新型コロナで発熱・重症化した場合に、すぐに頼める業者を一から探すことは難しいと思います。新型コロナだけでなく事故や災害など、家族に頼れない場合を想定して世話をお願いする体制を考えておいた方がいいですね」
猫の場合、犬のように散歩中の立ち話など機会もないため、近所の猫友達を見つけるのが難しそうな気がします。猫好きの友達や情報交換先はどのように探したらいいのでしょうか？「相談しやすいお医者さんを見つけたり、保護猫活動など地域のコミュニティを探したり、気になる団体のオンラインイベントに参加してみるのもいいと思います。
私が主宰する『ねこと今日』でもリモートでのキャットアカデミーを開催して、飼い方や病気のこと、高齢化の猫の世話などについて発信しています。猫ブームから10年近くたち、猫も高齢化していくので、私も体験談や知識を共有できる輪をどんどん広げていきたいと思っています」
●「自分にしかできない」を減らし、家族で猫の世話ができるよう訓練しておく
「猫を飼っていると“これは私しかできない”という世話もあると思います。友人は新型コロナに感染して入院となり、ご主人が2か月近く猫の世話をしていました。食事もトイレ交換もできたのですが、猫の爪を切ることができず伸びっぱなしに。
世話の内容も多岐にわたるので“どれができる、できないか”を家族で共有して、できるようにしておきたいですね。
たとえば、猫をケージに入れるのは大変な作業ですが、猫を洗濯ネットで包むと大人しくなりケージに入れやすいといったコツはあります。ときどき猫をケージに入れる練習を遊び感覚でやっておくと、緊急避難が必要なときに役立ちますよ」
●50代は人生の折り返し地点。新型コロナ感染が生き方を見直すきっかけに
「療養中は一人きりで過ごす時間も長かったのと、知人は新型コロナに感染後、あっという間に危篤に。芸能界では長年親交があった志村けんさんもお亡くなりになり、本当に“命があってこその人生”だと思いました。コロナが明けたときに違う世界が来る、そのとき私はなにをすべきか、と50代の私にとって今後の生き方を考えるよい機会でした」と川上さん。
「新型コロナは孤立や孤独を感じさせる病ですが、それを救ってくれたのが、猫の世話を引き受けてくれた山本さん、保健師さん、お医者さんといった出会った人たちの優しい言葉や行動でした。
私はショップも経営しているので、給付金申請などでは銀行や税理士にたくさん相談して助けられました。改めて私の暮らしには、いろいろな人が関わり、社会との繋りで生かされていることを実感しています。
今は『ねこと今日』の活動を通して、お世話になった医療従事者の方へ感謝の念を伝えたい。医療従事者への寄付につながる猫のチャリティグッズを企画中です」
●体の不調が表面化する年代だからこそ、無理はしないで
同世代の読者に伝えたいこと、を伺うと「女性の50代は更年期や生活習慣病など、体の不調が表面化する年齢だからこそ、新型コロナの感染に注意してほしい」と川上さん。「感染がきっかけで他の病気を併発したり、後遺症に苦しんでいる同世代の友人もいます。50代は働き盛りで無理もしがちですが、今は元気でも、決して若くはありません。コロナに感染したらある程度の覚悟も必要だと思って、感染予防に気をつけていきましょう」
川上さんの療養中の猫の世話や不測の事態への備え方のお話は、子どもや高齢者など世話を必要とする人が家庭にいる場合の心得に共通するものがあります。新型コロナ対策をきっかけに、病気や災害時のペットの預け先やお世話について、一度確認しておくと安心ですね。
＜写真提供／川上麻衣子さん 取材・文／磯 由利子＞
【川上麻衣子さん】
1966年生まれ。女優。14歳でデビューし、「3年B組金八先生」（TBS）の生徒役で注目を浴びる。以後、数々のテレビ・映画・舞台に出演。愛猫家としても有名で、仲間とともに「猫と人が暮らしやすくする提案を東京（to-kyo）から発信する」という思いを込めて、2018年「
ねこと今日 Neko-to-kyo」を立ち上げ、理事長を務める。YouTubeチャンネル「川上麻衣子ねこと今日neko-to-kyo」にて、猫の情報や新型コロナ体験の動画も配信。近隣の人や猫好き仲間の情報交換の拠点になればと、2019年千駄木に「Maj no ma（まいの間）」をオープン。著書に『彼の彼女と私の538日 猫からはじまる幸せのカタチ』（竹書房刊）
