女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセー。愛猫家としても知られ、一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務める川上さん(60歳)が、猫のこと、暮らしのこと、出生地であるスウェーデンのことなどをつづります。今回は、先日迎えた「還暦」がテーマ。故郷で起きた奇跡のような出来事や、同窓会で感じた思い、そしてこれからの人生の目標についてつづります。

猫とフィーカ
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フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと

故郷スウェーデンで迎えた還暦。長い長い誕生日を過ごして

川上麻衣子さんと母
2月に還暦を迎えた、女優・川上麻衣子さん(右)と、87歳の母

まだ実感は湧いてこないのですが、この2月におかげさまで先日無事に還暦を迎えることができました。

これは本当に偶然の成り行きで急遽決まったスケジュールではありましたが、なんと生まれ故郷のスウェーデン、ストックホルムで87歳の母と2人という環境の中、誕生日を迎えました。その日東京に戻る飛行機に搭乗したので、長い長い還暦誕生日を機上で過ごすこととなりました。

と言ったところで、とくになにがあるわけでもなく母も淡々と帰宅準備に追われていたため誕生日当日は「HAPPY BIRTHDAY!」的なものはなく静かにそっと過ぎていきました。

そのことが私にはかえってありがたく、また時差の関係から、より多くのお祝いの言葉を国境を超えていただいたことに感謝しています。

ストックホルムで迎えた誕生日前日に思わぬサプライズ!

ストックホルムの街並み
約3年ぶりに訪れたスウェーデン・ストックホルムの街並み

じつは今回の誕生日にあたり、ひとつ大きなサプライズがありました。

ストックホルムにある自宅アパートにて帰国前日、長年のつき合いである親しい母娘のマーヤとロッタの2人が誕生日のお祝いをしてくれました。

川上麻衣子さん親子と旧友
父母の旧友マーヤさん(左上)、母(右上)、マーヤさんの娘ロッタさん(右下)

このマーヤさんは両親が1962年に当時のスウェーデン王立大学に留学した際の父の同級生にあたり、以来ずっと交流のある両親にとって大変仲のよい友人です。

そして娘のロッタと私は1歳違いということもあり、10代の頃から両親とは別に親交を深めてきました。たまに訪れるスウェーデンの現状はいつもロッタから聞いています。

今回の短いストックホルム滞在中もお世話になりっぱなしでしたが最終日の夜、彼女たちがすてきなサプライズとともに訪れてくれました。

60年越しに、母のおなかにいる私を思い父が書いた「書」と再会

父の書を持つ川上麻衣子さん

夕食を終えて、談笑中おもむろに、「じつはとても貴重なものを預かってきたのよ」と手渡してくれたのは、きれいな文字で書かれた手紙と日本語が書かれた数枚の「書」でした。

マーヤさんが同じく同級生の女性から預かってきたというその書は、遡(さかのぼ)ること61年ほど前。

私が母のおなかにいるときに父が書いたようで、日本語のわからない友人たちは、もしや生まれてくる子どもの名前を考えていたのではないかと思っていたそうです。

書かれていたのは「日々是好日」や「壺中日月長」「龍飛昇天」など禅や故事にまつわる言葉たちでした。たしかに父のものと思われる筆跡。

一切の汚れや劣化なく、とても美しい保存状態で60年の時を経て私の手元にたどり着いてくれたことにはとても感激をしました。

あまりにきれいだったこともあり、61年前の香りがそのまま届いたような不思議な気持ちです。

川上麻衣子さんの父
61年前に自身が書いた書と、スウェーデンの友人からの手紙を読む父(96歳)

後日、96歳になる父に、その書「書」を届けたところ、当時の記憶ははっきりしないようでしたが、「若さがあっていい字だな」と自画自賛。60年越しに見る自筆に若さを感じるとはどんな気持ちなのだろう、と感慨深くなりました。