昨年12月に発売した新刊、『笠原将弘の旬副菜の極み159』が好評の和食料理人・笠原将弘さん。これまでに生み出してきたレシピは、なんと2万点以上(本人調べ)にのぼるそう。常に新しいレシピを生み出し続ける、その原動力はどこにあるのか。最近気になっている料理のことや、笠原家のちょっとしたニュース、そしてこれから挑戦してみたいことまで、今の笠原さんの「現在地」がわかるお話を、たっぷりとお届けします。
すべての画像を見る(全4枚)多国籍な料理が食べられる日本だからこそ、家では和食を食べてほしい
――笠原さんは『賛否両論』の厨房に立ちながら、国内外を忙しく飛び回っていますよね。最近は、どこかに行かれましたか?
笠原:先日、仕事で行ったスコットランドのアイラ島というところで、衝撃的なおいしさの料理に出合いました。アイラ島はウイスキーのシングルモルトの産地で、ウイスキー好きにとっては聖地のようなところ。ここでつくられているウイスキーは、海に囲まれているから潮の香りがするんですよ。独特の味わいなので、ウイスキーにそれほど詳しくない僕でも飲んでみてわかりました。そこで食べたのが、生ガキにシングルモルトウイスキーをたらしたひと皿。これが抜群にうまかった。さらにこれをアイラ島産のシングルモルトのウイスキーで流し込むと、もう最高でしたね。
――やはり、知らない土地で食べた味から、インスピレーションを受けることは多いですか?
笠原:それは、めちゃくちゃありますね。とくに海外に行くと、日本とはまるで違う味つけだったり、食材の組み合わせだったり、珍しい野菜に出合うことが多いので、大いに刺激を受けます。これを日本の食材や調味料に置き換えてみるとどんな味になるだろうと、考えるのが好きですね。今までESSEで紹介したレシピにも、海外の料理をヒントにしたものがかなりありますよ。
――それをいうと、私たちの普段の食卓も今は本当に多様ですよね。
笠原:海外に行っていつも感じるのは、日本人はいろいろな国の料理を食べ過ぎているということ。家庭でも「今日はパスタ」「明日は中華」と日替わりで食べているでしょ。さっきのアイラ島の人たちなんて、その土地の料理しか食べてないですよ。でも、素材を生かしたシンプルな味ばかりで、食べ飽きなくてすごくいいなぁと思いました。
――今の日本は、手軽にいろいろな料理を食べられる環境が整っていますよね。
笠原:そう、日本はおいしいものがあふれていますよね。コンビニだって、スーパーのお総菜だって、各国のいろいろな味が食べられて、それが当たり前になっている。だからこそ、せめて家でつくるときくらいは、「旬」を大事にしてほしいと思いますね。
――そうですね。家でつくるときくらいは、という笠原さんのささやかな願いがレシピにも込められているように感じます。
笠原:食材の旬を知ることは、大人のたしなみだと思うんですよ。僕は、食べ物にその人の教養が出ると思っています。だれかと食事に行ったときに、季節の食材や器の話ができたら楽しいじゃないですか? 普段の食事づくりのなかでも旬の食材を意識して選ぶことで、旬の食材に関する知識が増えますし、食卓に並んだ料理から、家族の会話も広がりますよね。家庭でも毎日10分でも、食材の旬を話題にしてもらえたらうれしいですね。


