夫の引田ターセン氏とともに、2003年より東京・吉祥寺でギャラリー「フェブ」とパン屋「ダンディゾン」を営む60代の引田かおりさん。今回は、引田さんの親子関係のこと、亡くなった父への思いについてご紹介します。

※ 記事は『LOVE MYSELF』(大和書房刊)より一部抜粋、再構成の上作成しております。

引田さんの横顔
私のピアスは真珠が基本です。貝殻の内側の色で真珠の色が決まるそうです。奄美大島パールは蜂蜜のようなゴールドの輝きです。大きすぎない8㎜くらいが好みです
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夫婦も親子関係も一朝一夕ではない

夫婦よりも厄介なのは親子関係かもしれません。夫婦は所詮(しょせん)他人です。理解できない大きな問題をどうしても解決できなければ離婚という選択肢があります。でも親子はそういうわけにはいきません。

国際結婚などで海外に長く住む友人たちの一時帰国はまさに久しぶりに会う親たちとの葛藤の日々です。年々年老いていく親たち、せっかく一年に一度の再会なのに、どうして優しくできないんだろうと、彼女たちは反省しきりです。

親の期待値と彼女たちの現実がまさに嚙(か)み合わない時間の連続、お互い大事なときに理解を深める努力を放棄してきた結果、どちらに非があるわけでもないんだけどギクシャクした日々に。

私は還暦になったときに、人の心配はもうやめると決意しました。でも悩み多き友人たちの話を聞いていると、ついつい自分の考えや経験が少しでも役に立てばいいなと思ってしまい、話を聞いたり、アドバイスしたりしてしまいます。

夫婦も親子関係も決して一朝一夕ではありません。時間ができたらと思っている間に子どもは成長し、共通言語も話題も見つからない寂しい関係になってしまうのです。

なるほどそうかもしれないと危機感を持ってくれた夫は、時間が自由になる海外出張に息子を同行させたり、娘とふたり旅を計画するようになりました。振り返ると、やっぱり重ねた時間が今をつくっていると思います。

お互いそこに愛があったことだけは信じよう

ガラスの置物たちの写真
透明なガラスも好きですが、ぽってりゆらぎのある厚みの色ガラスも大好きです。緑のものは横山秀樹、ピンクのピッチャーは辻和美、黄色のお皿と「KAMISAMA」「カラノナイタマゴ」はイイノナホです

前述の親子のひとりも、お母さんがとても優秀な仕事人間で、小さい頃はずいぶん放っておかれた記憶があるそうです。スーパーのレジがもたついたりしているとお母さんがいつどなり出すかとハラハラドキドキしていたことも。

私は私、お母さんはお母さんと割りきって生きてきたのに、今になってゆっくり話を聞いてほしい、バタバタ出かけないで家にいてほしいと自分に要求する親に、なにを今さらと当時の怒りが再燃しているようです。

できれば優しくしたいのにそうできない彼女の苦しみを、そばでただ聞くことしかできない私ですが、「これが最後になるかもしれない」「もう先は長くない」というような脅し文句を子どもたちに言うのだけは絶対やめようと心に刻んでいます。

かくいう私もどうして離婚しないんだろうという親のもとで育ちましたから、結婚後は距離をおき、遠くから愛と金銭的な援助でつじつまを合わせていました。ほしかった形とは違うかもしれないけど、お互いそこには愛があったことだけは信じようと思っています。