「薬膳」と聞くと、なんだか難しそう…と思われがちですが、いつもの食材を体の不調に合わせていただき、症状をやわらげる、とても身近な「食養生」です。暮らしのなかに「薬膳」を取り入れる方法を、料理家のワタナベマキさんにご紹介いただきました。
※ この記事は『薬膳で体と心を整える』(扶桑社刊)を一部抜粋、再構成のうえ作成しています。
すべての画像を見る(全5枚)薬膳を学び始めたのは意外なきっかけから
もともと薬膳や食材の効能に関心があり、1年ほど前に「国際中医薬膳師」の資格をとった料理家のワタナベマキさん。本格的に学び始めたのは、意外なきっかけからでした。
「受験勉強をがんばっていた息子の姿に刺激を受けて、私もなにか挑戦しようかなと。ちょうど仕事でご一緒したイスクラ産業さんが中医学のスクールを主宰されていると聞いて、薬膳をイチから勉強してみようと思ったんです」(以下、ワタナベマキさん)
陰陽や五行、気血水のバランスといった中医学の基礎理論から臨床に関わる専門知識まで、実習を交えて体系的に学んだことで理解が深まり、薬膳と和食の共通点にもあらためて気づいたといいます。
「基本的なところでいえば、旬を大切にすることですね。旬の食材が有効なのは、その季節に必要な栄養や薬効を備えているから。きちんと理由があるんですよね。これまで自分がなんとなく実践してきたあれこれが、理論的に裏づけられ、答え合わせをしているような感覚で勉強を進めることができました」
季節と体調に合った食材選び
薬膳では季節を五つに分け、五臓との関わりで捉えます。春は「肝」、秋は「肺」といったように、対応する臓器を意識した食材選びも心がけているそうです。
「季節に沿って五臓を労わり、体を整えておくことで、次の季節を健やかに迎えられるという考え方です。冬は生命エネルギーを司る『腎』の季節。腎が弱ると抵抗力が下がるとされ、私自身お正月に風邪をひきやすいこともあって、腎を補う黒ゴマや黒豆などの黒い食材を意識して多く摂るようにしています。こんなふうに不調になる前に養生できるのが、薬膳の強みだと思います」
「どの食材もすぐに効果が出るわけではありませんが、1年をとおして体調を大きく崩さないのは、きっと食養生のおかげです。自分の体調に目を向け、少しずつケアを続ける意
識が大切だと思っています」



