若い頃は気にならなかった靴の悩みが、30代を過ぎてから増えたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。歩いていると足が疲れる、ひざが痛む…。その原因、もしかしたら足に合っていない靴を選んでいるからかもしれません。今回は、2万人以上の足に触れてきた、予約の取れない人気シューフィッター・佐藤靖青さんに、靴を選ぶ際に気をつけるべき3つの鉄則を教えてもらいました。

※ この記事は『予約の取れないシューフィッターが教える正しい靴の選びかた』(扶桑社刊)に掲載された内容を抜粋・再編集しています 

※画像はイメージです。(画像素材:PIXTA、以下同)
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試し履きをして買った靴が足に合わなくなる理由

2万人。これはシューフィッターとして年間に触れてきた人の足の数です。1500足。20代のころにデザインした靴のサンプル数です。4万足。30代から修理屋としてリペアしてきた靴の数です。頭と手のなかにはありとあらゆる靴のデータがあります。

シューフィッターの私のもとには、「買った靴が合わない」「痛い」という相談が山のように届きます。なぜ試し履きをして買った靴が足に合わなくなるのか?

それは、靴を選ぶ際に根本的な過ちを犯しているからです。そこでまず、靴選びの鉄則三か条を紹介したいと思います。

靴選びとはずばり、「目的×サイズ×インソール」の掛け算で成り立っています。

鉄則その1:靴には目的がある

NIKEのスニーカー
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多くの方は、スニーカーは歩きやすいと思い込んでいます。そもそもスニーカーという言葉の定義が広すぎるという問題もあり、ハイヒールが走りづらいことはだれにでもわかりますが、ナイキの代表的なスニーカーである「エアフォース1は歩きづらい」と言っても、なかなか理解してもらえません。

●バスケットボールシューズによくある誤解

「ナイキの『エア』はクッションで、歩くためのものでしょ?」とけげんな顔をされます。私自身も好きで履いていますが、正直言って歩きにくい。

なぜかというと、ナイキの大人気スニーカー、エアフォース1もエアジョーダンもバスケットボールシューズだからです。バスケットボールは走るより、止まる、ターンするといったブレーキをかける動作に重きが置かれたスポーツです。つまり、エアフォース1もエアジョーダンもブレーキをかけるための靴なのです。

バスケットボールシューズを、ファッションとして楽しむのは大いにけっこうですが、歩く用途で履くと、とにかく疲れます。疲れない靴が欲しいのであれば、前に進むための靴を買わねばなりません。ナイキの2万円のバスケットボールシューズより、ワークマンで売っている3000円のランニングシューズのほうがはるかに歩きやすい。

●「歩きやすい靴」を選ぶためのポイントは

足の指が曲がるところをフレックスポイントと呼びますが、歩くための靴は必ずここで曲がります。

たとえば、ワークマンのハイバウンスバラストウォーク(2900円)はフレックスポイントできちんと曲がります。他方、エアフォース1(1万6500円)は、ほぼ曲がりません。逆に言うと、バスケットボールのプレイ中にフレックスポイントが曲がるとケガをします。

クッションや素材などの話の前に、まず曲がるべきポイントで曲がらなければ、ラクに歩くことはできません。

靴には、目的があります。進むための靴とブレーキをかけるための靴では、そもそもの用途が異なります。目的を知らずに履いていると、いつの間にか「疲れる靴」「痛い靴」になります。同じスニーカーでも用途をきちんと理解しておくことが非常に重要なのです。