テレビドラマ『北の国から』で人気を博し、現在も多数の作品で活躍する俳優・中嶋朋子さん。自身がもつ山荘に造りつけた壁一面の本棚は、 “自分のなかの新しい窓を開く場所”なのだそう。中嶋さん流の読書の楽しみ方やお気に入りの本を教えてもらいました。
すべての画像を見る(全5枚)演じる仕事のなかで、読書が「自分の時間」だった
―心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ―
『星の王子さま』の有名な一節が、静まり返った山荘に柔らかに漂います。広い窓の外には、青々と茂る夏の木立。本をめくり、それを読み上げる声以外、聞こえてくるのは鳥のさえずりだけ…。まるで映画のワンシーンのような、でも本当に起こったこと。俳優・中嶋朋子さんの山の家でのひと時です。
「ずっとずっと読書は好き。小さいころから演じる仕事をしていて、そのなかで『自分の時間』をいつでももてるように本を読んでいたのかもしれません。待つことが多い仕事だしね」
セリフを与えられ、いろいろな人格になり生きる。あの人この人の人生を行き来する中嶋さんを、本の世界は悠然と受け止め、感情や想像力を豊かに育んでくれたのでしょう。
高揚した気持ちを留めるために、メモをとる
「願わくは、本の、その世界に浸り続けていたい。(中略)素敵なフレーズに涙したり、深遠な思想に感銘を受けたり、猛烈に心はつかまれまくる。そんなだから、もう! 私の読書は、忙しくて仕方ない」。
自著『めざめの森をめぐる言葉』(講談社刊)のなかで、読書について語った言葉が印象的です。あちこちに動く感情に身を委ねつつ、気になった言葉をノートに書きとめるのが、中嶋さん流の読書です。
「あの本のあのシーンの言葉ってなんだったっけ? って、歯がゆい思いをしないために。何冊もの本を『渡り読み』するから、ワッてインスピレーションを受けたときの高揚した気持ちをちゃんと留めておきたいんです。そして、その言葉の蓄積が、私の思想のマップになるというか…」
演じるために「読む」わけではない
演じるということは、自分がもたない感情をもつ人間になるということ。
「こんな考え方するの?」「どうしてこういうことしちゃうわけ!?」。自分の脳では理解できない価値観や行動でも、これまで読んできたたくさんの物語のどれかとすり合わせて、合点がいくことがあるのだといいます。
だからといって、演じるために読書をしているわけではありません。楽しいから読む。知らない世界を見たいから読む。