考えが変わった夫からのひと言

渡辺満里奈さん
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――昔から相手に対して我慢せずに意見できていましたか?

渡辺:じつは結婚した当初、私はけんかをするとすぐ黙ってしまうタイプだったんです。腹が立っても、「どう言えばいいかわからない」とか、「けんかを続けるのが面倒くさい」とか、そんな理由で話をするのを避けてしまって。

だけど、夫に「黙られると、本当になにを思っているのかわからない。察してくれっていうのは、自分にはわからないから言ってくれ」って指摘されたんですよ。

「もしけんかをしたとしても、ちゃんと話をしてお互いが納得して、その日のうちに終わらせよう。それで『おやすみ』って言って寝る。3日も4日も口を聞かないみたいなことは耐えられない」って言われて、そういう考え方もあるのかとハッとしましたね。

――そんなことがあったんですね。

渡辺:最初はうまく自分の思いを伝えられませんでしたが、なんとか言葉にしてきました。そういう「黙らない訓練」を積んだ結果、今では「それ以上言うな、言ってくれるな」くらいの状態に(笑)。でもそういう風に言ってくれて、今も受け止めてくれる夫に感謝しています。

夫と「擦り合わせのけんか」をしてきたことが正解だった

――「黙らない訓練」というのは、どのようなことをされていたのでしょうか?

渡辺:いちばんけんかをしていたのが、結婚した当初。お互い何十年もひとりで暮らしてきたわけですから、その擦り合わせをするのがものすごく大変でしたね。「え? あなたってそんな感じなの?」と思うこともありましたよ(笑)。もちろんこれを「訓練だ!」と意識していたわけではないですが、その「擦り合わせのけんか」を諦めずに続けてきたことが、いちばんよかったのかな。

――自分が変わったと思う瞬間はありましたか?

渡辺:ありますよ! 途中で「あ、強くなったな」って思うことがありましたね。けんかではないけど、少し空気が悪くなったときに、ひと言なにかを言えるようになった瞬間にハッとしました。

ただ、いちばん大きく変わったのは、やっぱり子どもを産んだあと。ものすごく忍耐力がついたなと感じます。子育てって、思いどおりにいかないことにひたすら耐えないといけないわけですから。

“耐える”というとネガティブに聞こえるかもしれないけど、実際には「こうしたい」と思っても、それを叶えるのが難しいことばかり。そんな日々を繰り返すうちに、忍耐力も育ちましたね。

――そうだったんですね。

渡辺:たとえば、夫の言動で私が「イヤだな」と感じることがあったとしても、その場でワーッと感情的に言わないようになりました。「イヤだな」と思ったときには、一度時間をおき、子どもがいないタイミングで「あのときのことなんだけどさ」と声をかけるようにしています。

――その場であえて言わないというのは、つい我慢してしまう人にもできるかもしれないですね。

渡辺:「自分と同じテンションで、人は返してくる」と私は思っているので、自分が怒っていたりしたら、「ちょっとあとで言う」ことにしています。その間に腹が立った原因を整理して言語化することができれば、伝えるテンションも変わる。話し方を自分の中で練習もできる。私はなにも言わなくなる人だったので、「まぁ、ちょっと話をしようよ」なんて感じできり出せるようになったことは本当に変わったことですね。

ときにユーモアを交えながら、フランクに語ってくれた渡辺満里奈さん。夫婦の関係にたとえ変化が訪れたとしても、コミュニケーションをすることで、お互いが納得できる関係をつくり続けていくことが大切なのだと教えてくれました。

不機嫌ばかりな私たち

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