約10年にわたって、フランス・パリで息子とふたり暮らしをしていた、作家の辻 仁成さん(65歳)。息子の巣立ちをきっかけに犬を迎え、幸せな日々を送っています。60代で初めて経験した愛犬との暮らし、そこから得られる喜びや自身の変化について伺いました。

辻仁成さんと愛犬の三四郎くん
辻仁成さんと愛犬の三四郎くん
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神経質できれい好き。そんな自分が別人のように変化

三四郎くん正面

3年前からミニチュアダックスフントの「三四郎」が、新たに家族に加わることに。にぎやかで愛情に満ちた日々は、エッセイ『犬と生きる』(マガジンハウス刊)でもつづられています。三四郎を迎えようと決めたのは、長年育てた息子が大学に合格し、「自立」のときが来たのがきっかけだそう。

「僕は子どもの頃から犬が好きだったけど、親が転勤族だったので飼うのは難しかったんです。息子とふたりきりの生活が始まったときにも『犬を飼いたい』とせがまれたけど、当時は息子を育てるのに精いっぱいで、とてもじゃないけど無理だとあきらめていました。

でも、小さかった息子も巣立って、いずれは自分の家族をもつことになる。そうなったら、自分はひとりになって、すごくさびしくなってしまうだろうと。そうなっても犬のぬくもりがそばにあれば気持ちもまぎれるし、僕はもともと世話好きなので、面倒を見ることはまったく苦にならない。そう考えて、犬を迎えることにしたんです」

そう考えて、人生の後半を犬とともに生きようと決めた辻さんですが、ひとつ心配ごとも。

「僕はかなりのきれい好きで神経質なので、犬のうんちやおしっこの片づけがちゃんとできるのかなあ…と。パリの歩道はすごく汚いので、そんな不衛生なところを散歩して、そのまま部屋に入るなんて、想像しただけでひっくり返りそうで。

でも実際に三四郎と暮らしてみると、そんな心配はすぐになくなりましたね。三四郎があまりにもかわいくて、もう自分の体の一部のようになってしまって。うんちやおしっこの片づけもぜんぜん平気になって、三四郎が来る前とは別人のようです」