子どもに病気や障害が見つかった場合、親はどんな対応をとるべきなのでしょうか。突然声が出てしまう音声チックやふいに身体が動いてしまう運動チックなどの症状をもつ「トゥレット症」当事者の酒井隆成さんに、ご自身の体験をもとに、「子どもに病気が発覚したら、親御さんにやってほしい5つのこと」を伺いました。

トゥレット症 酒井さん
「トゥレット症」当事者の酒井隆成さんにお話を伺いました
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ひとりで抱え込まずに、外の人とつながりをもつ

自分の子どもに病気や障害が発覚したら。まず、1つ目に酒井さんが挙げるのが、「ひとりで不安を抱え込まない」ということです。

「自分のお子さんに病気や障害が発覚したとき、受け入れるのは本当に難しいと思います。どんなに他人にアドバイスされても、時間が経たないと受け入れられないものだと思います。僕の親もそうだったと思いますが、最初はなかなか落ち込んでしまう人も多いのではないでしょうか」

しかし、落ち込んだとしても、その不安をたったひとりで抱え込むのはよくないと酒井さんは指摘します。

「子どもにとって親は絶対的な存在です。親が鬱々とした気持ちを抱え込んでしまうと、子どもにとってもよい影響を及ぼしません。だからこそ、親御さん自身がカウンセリングを受けたり、専門家や学校の先生、同じ病気を持つ当事者、スクールカウンセラー、医療関係者、NPOといった外部の人を頼ったりすることがすごく大切ですね。家族以外にも相談できる人をたくさんつくり、困ったときにはぜひ助けを求めてください」

病気や障害があっても「不幸」だと思わない

子どもの病気や障害が判明したら、「なぜこの子がそんな大変な目に遭わなければならないのか」と悲観的になる親御さんも少なくないでしょう。でも、それに対して酒井さんは、「病気や障害を抱えながらも、幸せに生きている人がいることを知ってほしい」と語ります。

「病気の有無が、子どもの幸せや不幸に直結するわけではありません。僕自身も、かなり重度のトゥレット症で、電車に乗ったり、飲食店に行ったり…という当たり前のことに、日々ハードルを感じます。ですが、一方で、周囲の人に助けられることが多く、おそらく健常者の方よりも人の優しさを感じる機会はずっと多いはず。誰かに優しくされるたびに、『あぁ、自分は幸せだな』と感じられるこの人生は、自分では素敵なものだと思っています。だからこそ、『病気や障害があるから不幸』だと思わないでほしいのです」

環境はできるだけ整えてあげる

小学校から大学まで、特殊学級や特別支援学校への進学を勧められることもあったという酒井さん。それでも、「周囲の友達と同じ学校に行きたい!」という強い想いから、すべての学校は一般の子が通う学校へ進学したそうです。ただ、その背景には、親御さんの強い支援があったとか。

「僕のような病気があると、授業中にもつい声が出てしまうし、テストもみんなとは別に1人で別室で受けるなどの措置が必要になってしまいます。だから、進学が決まった学校に対しては、『この子にはこういう病気があるのですが、普通の子と同じように教育を受けてほしいと思います。できるだけこういう配慮をお願いします』と、毎回両親が丁寧に説明してくれていました。こんな病気なので、毎回環境が変わるたびにストレスが溜まってしまうのですが、両親が学校に先回りして相談してくれていたおかげで、進学や進級時にストレスを感じることはほとんどなかったです」