急病や転倒…親が高齢になるとともに、入院のリスクは増します。そんな親の突然の入院でかかる費用や、介護・入院のお金にまつわる悩みに、介護とお金の専門家の太田差惠子さんが回答。さらに、親の介護・看護で「申請するともらえるお金」リストも紹介します。
すべての画像を見る(全2枚)医療費以上に負担感が大きいのはオムツ代!?
「入院をきっかけに介護が始まるケースは多いですし、また、施設に入所しながら病院に入院ということも珍しくありません」と話す、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さん。入院のお金についても考えておく必要があります。
「まず、多くの場合、入院時に入院保証金が必要となります。病院によって額は異なりますが、5万円から10万円程度。現金で求められるケースも多いようです」(太田さん、以下同)
そして、入院となると下記のような費目が必要になるそう。
「医療費については高額療養費制度がありますから、支払いが青天井になるということはありません。ただ、医療費以外のお金、とくに入院日数に応じて積み上がる費目が大きな負担となります」
それは、食事代や個室を利用したときの差額ベッド代、そしてバカにならないのがオムツ代。
「オムツ代に補助金が出る自治体もあります。高額療養費制度もそうですが、行政のサポートの多くは申請しないと受けることはできません。親の介護は情報戦。アンテナをはって、わからないことは相談していきましょう」
●80歳の父親が個室に2週間入院した場合の費用
医療費…5万7600円
医療費には「高額療養費制度」があり、その月に支払った医療費の自己負担額が上限を超えると払い戻しを受けることができます。一般的な所得者の上限は5万7600円。
食事代…2万580円
病院の食事代の自己負担額は厚生労働省によって1食当たり490円(ただし、非課税世帯には負担軽減があり)。これは高額療養費の対象外なので実費として支払う必要があります。
オムツ代…2万1000円
オムツの持ち込み不可の病院は日額で支払う。その額は病院によって異なり、1日1500円というケースも。医療費控除の対象になるので、オムツの使用証明について病院に確認を。
差額ベッド代…11万6508円
1人部屋の差額ベッド代の平均は8322円(中央社会保険医療協議会/令和5年7月)。病院の都合で個室に入る際は支払う必要はないので事前に伝えておくべき。
家族の交通費
想定し忘れがちなのが、家族の交通費。診察のつき添いであれば医療費控除の対象となりますが、入院のお見舞いの場合は控除の対象外。
知っておきたい、介護・入院のお金にまつわるQ&A
話題にしにくいお金の話。相手が親だったらなおさらです。でも、ある程度の年齢になると、いつなにが起こるのかわかりません。後悔しないように準備できることを、太田さんに回答してもらいます。
●Q.親にお金のことを切り出しにくい…
A.詰問してはダメ!世間話をよそおって
「お金、いくらあるの?」などと直球で聞いたら、不愉快にさせてしまうのがオチ。強引に聞き出すのは法にふれるので要注意。
たとえば、友達の家が介護のお金で大変だと世間話をよそおったり、自分の加入している民間保険の話をしながら「お母さんたちはなにに入ってる?」と水を向けたり。なにげなく情報を引き出し、メモを残しておきましょう。「万が一のときのために、お金、わかるようにしておいてね」くらいの言い方はできるかも。
●Q.独居でがんばる認知症の母。私が退職して同居するしかない?
A.介護離職はできるだけ避けて!
親のそばにいてあげられないもどかしさや、介護のために休みが続き同僚に申し訳ないと、介護離職を考える人は少なくありません。でも、よく考えてください。仕事を辞めて、どのお金で生活をしていくのですか?
親の年金で暮らしていけたとしても、親が亡くなったら即、収入はゼロ。そのとき、再就職できるとも限りません。介護休業制度などを利用し、子どもがそばにいなくても親のケアができる態勢をつくることも考えて。
●Q.親は年金でギリギリの生活。入院や介護になったら心配…
A.非課税世帯にはさまざまな公的支援があります
所得が一定額よりも低く、住民税を払っていない「住民税非課税世帯」には、さまざまな負担軽減措置があります。病気やケガをしたときの医療費や、介護サービスの利用料も、負担上限額が低く設定されています。非課税世帯向け給付金が支給されることもあります。
保険外の費用はどうしてもかかってしまいますが、そこまで恐れなくても大丈夫です。ただし、これらの措置を受けるには申請が必要です。早めに自治体窓口に相談を。
●Q.「他人の手は借りない!」と言う父。母が父の介護をすべてやっています
A.「家族介護慰労金」もありますが…
介護サービスをまったく利用せずに1年間、在宅でケアをしている家族に現金が支給されるのが「家族介護慰労金」。要介護度4・5であること、非課税世帯であることなど、その給付条件は厳しく、実施していない自治体もあります。条件に当てはまるようでしたら申請してみてはいかがでしょうか。
ただ、家族だけでの介護を続けていると共倒れしてしまいます。慰労金を受給できたとしても、一刻も早い介護サービスの利用をおすすめします。