マナーと聞くと少し緊張したり、フランスのテーブルマナーと言えばなおさら難しいという印象を受けることもあるでしょう。フランス文化研究者・翻訳家のペレ信子さんは、「最近、パリの権威ある星つきレストランに行ってみて、時代は変わったと感じた」そう。ペレさんが感じた変化についてレポートしてくれました。
すべての画像を見る(全4枚)ズラっとカトラリーが並ぶことは、ほとんどなくなった
以前はよくテレビで見られたテーブルマナーの「OK」「NG」クイズ。マナーの先生に「これはマナー違反です、こうしましょう」と厳しくダメ出しされるほど番組が盛り上がっていた記憶があります。
今でも、テーブルマナーの動画などでテーブルにズラっと並んだカトラリーからどれを選ぶか説明するものがありますが、最近あまりそのようなテーブルは見なくなったと思いませんか?
フランスでは、昔は前菜からデザートまで同じブランドの同じシリーズの食器を使い、カトラリーも同じブランドの同じシリーズで揃えているのが普通でしたが、今はシェフがそれぞれの料理に合わせて選んだ食器とそれに合うカトラリーを出すことの方が多くなりました。そうすると、毎回次の料理のためのカトラリーがセッティングされるので、もう迷う必要はなくなったのです。
ただ、日本の老舗高級ホテルの披露宴ではまだカトラリーがたくさん並んでいることが多いので、外側から使うというルールを知っていて損はありません。
技術や知識も不要になってきている
子どものときに、祖母の家にあった「マナーの本」をたまに眺めていました。フランス料理の店ではこんなにいろんなことを知っていなければ食事ができないのかと驚いたのを覚えています。
そのなかで記憶に残っているのが、フィンガーボウルの水を飲む水と間違えて飲んでしまって大恥をかいた、というコラム。自分は間違えないようにと肝に命じたものです。
また、舌平目(したびらめ)のムニエルをきれいに食べられるように、フォークとナイフを駆使してお皿の上でエンガワと中骨を取り除く技術。これもかなり練習しなければできないなあと思いました。
現在のレストランではどうでしょうか。舌平目が料理に出ても、すでに皮や骨は取り除かれて食べやすくなっていますし、手で食べるアミューズもありますが、そのときは給仕の人が「フィンガーボウルです。手が汚れたらお使いください」と一言添えてくれます。至れり尽くせりになりました。