おしゃれのおかげで前を向けた

――そのきっかけは何だったのでしょう?

柏木:事故の翌年、主人が新広島テレビで務めていたクイズ番組の司会を私が引き継ぐことになったことです。

お話をいただいたときは、「司会なんて、とても無理です」とお断りしたのですが、「広島は原爆のどん底から立ち直りました。柏木さんにも立ち直っていただきたいのです」とおっしゃっていただき、心が動きました。

ピンクのスーツ
ピンクのシャネル風のスーツを着て司会に挑みました(ご本人提供)
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主人を亡くしてから半年後、仕事復帰のために私が選んだ服はピンクのシャネル風スーツ。東京から広島へ向かう新幹線では、ローズピンクのハーフコートを羽織りました。その様子はスポーツ新聞などでも報じられ、今でも手元に残してあります。

このお洋服を手に取った自分の気持ちが、今ならよくわかります。

「主人がやっていた番組を、私ができるかしら」という不安と自信のなさ。でも、そんな自分をここで変えなきゃ、という思い。

あのときの私には、ピンクの服の力が必要でした。ピンクの服は私に、力と前を向く勇気を与えてくれました。身にまとうもので人はこんなにも変わることができる。
それからの私は、おしゃれをすることで元気を取り戻していったのです。

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柏木由紀子ファッションクローゼット (扶桑社ムック)

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