更年期を迎えると女性の体には大きな変化が訪れます。「更年期を単なる通過点ではなく新たなステージへの出発点ととらえ、後半の人生に向けて踏み出す準備をはじめましょう」と話すのは、医師・天野惠子さん。自身も更年期症状に悩んだ経験から、日本における「女性外来」の発展に尽力してきました。最新の情報をまとめた自著『女の一生は女性ホルモンに支配されている!』(世界文化社刊)から、不調の程度を知るセルフチェックの方法と、対処法を紹介します。
すべての画像を見る(全3枚)不調の程度を知り、適切な対処法を
個人差の大きい更年期症状を客観的にとらえるために数値化したのが「簡略更年期指数(SMI)」です。
婦人科医の小山嵩夫先生が開発したもので、上のチェックシートは診察の場でも使われています。自分の不調の程度を知り、適切な対処を心がけましょう。
更年期の不調を和らげる3つの治療法
更年期症状の治療法のなかでも、とくに効果を発揮しているとされるのが「ホルモン補充療法、漢方薬、プラセンタ」。
症状によって効果のあらわれやすい治療法は異なり、ホルモン補充療法には禁忌のケース、不正出血や乳房の張りなどの副作用もあります。主治医の指示のもと、定期的な経過観察を続けながら適切に行うことがなによりも大事です。
●ホルモン補充療法
減少したエストロゲンを補充する方法。一般的には、子宮内膜増殖症発症予防のためにエストロゲンとプロゲステロンを併用する方法(HRT)を、病気などで子宮を摘出した人にはエストロゲンを単独投与する方法(ERT)を行います。経口剤、貼付剤、ジェル剤の3タイプがあります。
【禁忌のケース】
・子宮体がん、またはその疑いのある人
・乳がん、またはその疑いのある人、過去に乳がんになった人
・原因不明の不正な性器出血がある人
・重い肝機能障害のある人
・血栓症になったことがある人
・心筋梗塞や狭心症、脳卒中になったことがある人
●漢方薬
重い副作用が少なく、根本的な体質改善に効果があることが特徴です。特によく使われるのは「三大処方」と呼ばれる定番の漢方薬。証(体格や体質を加味した漢方独自の診断方法)に応じて処方されます。おおよその目安として「実証」はがっちりした体型で体力があり、胃腸が丈夫なタイプ。「虚証」は筋肉が少なく疲れやすく、冷えの多いタイプ。「中間証」はどちらにも偏らないタイプです。
【女性のための三大処方】
・当帰芍薬散(虚証)
・加味逍遙散(中間証)
・桂枝茯苓丸(実証)
●プラセンタ
医療用プラセンタは健康で満期出産した人の胎盤から抽出した水溶性物質で、注射剤「メルスモン」は厚生労働省より更年期障害に対する保険適用が認可されています。とくに肩こりやだるさの解消に効果的な場合があります。