大きな地震が起きるたびに、「きちんと備えなければ…」と思いつつも、どこから手をつけたらいいかわからないという方もいらっしゃるのでは? 国際災害レスキューナース・辻直美さんによると、「まずはキッチンの対策」が大切なのだそう。
辻さんの著書『プチプラで「地震に強い」部屋づくり』(扶桑社刊)でのコメントを一部抜粋、再構成し、“キッチン防災化”のポイントをご紹介します。
レスキューナースが教える「地震に強いキッチン・弱いキッチン」
すべての画像を見る(全9枚)キッチンは重量のある調理家電に割れる食器類、お酒やしょうゆなどの液体類など、危険なうえに落下して散乱したら片づけが大変なものがいっぱい。在宅避難となったとき、キッチンはなにかと使う場所ですから、すみやかに復旧できるよう備えておく必要があります。
辻さんは災害専門のレスキューナースとして国内外34か所の被災地で救助やケアにあたってきた防災のプロ。同時に、阪神・淡路大震災で実家が全壊した経験があります。
“見せる”収納は、絶対NG!
絶対にやめてもらいたいのが、包丁をはじめとした調理器具の壁掛け収納。
マグネットタイプで壁のデッドスペースに設置でき、使うときに必要な包丁がすぐに手に取れるので便利なのだと思います。しかし、地震が起きたとき、包丁がいきなりあなたに向かって飛んでくるかもしれません。
東日本大震災の被災地に支援に入ったとき、菜箸が首のつけ根、頸動脈に刺さって亡くなったご遺体を目にしました。菜箸ですら恐ろしい凶器になるのです。
包丁類はどうか、扉の裏や引き出しに収納してください。日々、料理するなかで、扉や引き出しをあける、というワンアクションが手間だと感じるかもしれませんが、命と安全には替えられません。
重いフライパンやお鍋もコンロ下の棚に収納しましょう。東京に住んでいる知人は、「東日本大震災の日に帰宅したら、玄関に圧力鍋が落ちていてゾッとした」と話していました。重たい圧力鍋も、1メートル近く飛ぶのです。
冷蔵庫は中と外で対策を!
キッチンで怖いのは「冷蔵庫」です。まずは転倒防止対策を。床に耐震マットを敷き、つっぱり棒で天井でのスペースを埋めておきます。
そして、冷蔵庫の中も忘れてはいけません。冷蔵庫などの大型家電や家具が歩き出す原因は、地震の揺れに加え、中に入っているものが動いて反動がつくからです。それを防ぐために、冷蔵庫の棚には滑り止めシートを貼り、そのうえで、食材をケースに入れて収納をします。
冷蔵庫の扉には子どもの指挟み防止ストッパー(ドアロック)をつけて、扉が開かないようにしておきます。冷蔵庫の中のビンものが飛び出して割れると危険ですし、掃除が大変です。
収納ケースも滑り止めシートもドアロックも100円ショップで売っているもので十分です。このわずかな手間とコストがいざというとき、頼りになります。