●鏡は「他人の目」でもある

外を歩けばウインドウなどに写った自分を発見しますね。髪や服装が乱れていたりするのを直すのとおなじです。それから鏡は、室内を逆に映し出すことで、少しだけ住まいを客観視することができます。つまり鏡は他人の目であり、またはもうひとりの自分の目なのです。ひとり暮らしの私には、大事な目と言えるかもしれません。

着替える小笠原さん
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できるだけ心地よい環境を整えることは、家の中の整理整頓だけでなく、心の持ち方や顔の表情にも関係すると思っています。笑うと脳が活性化するそうです。おかしくなくても、嘘笑いでもいいそうです。口角を思いきり上げることで、脳は反応するそうです。笑うとシワが増える? でも私はシワ愛好者です。シミもできてしまった当初は、ケアを怠った自分に失望しましたが、数年たった今では、「愛嬌愛嬌!」と言ってやります。

●母からの教え「鏡は心を写すもの」

女優さん方の高齢期の顔が私は好きです。ご本人や関係者は、私の意見をもしかしたら快く思わないかもしれませんが、シワやたるみあってこその深い人間味が表現できれば、俳優として、大物だと思います。彼女らは、おそらくよーく鏡で心をのぞき込んだことでしょう。そしてその年齢にしか表現できない心の様を、すてきな顔立ちの上に載せたのです。

「うらむかうたびに こころをみがけとや 鏡は神のつくりそめけむ」というのは、母が私に教えた和歌です。近年になって、母の遺品の中からこの歌の色紙を発見し、忘れかけていたこの歌を思い出し、変体仮名を一生懸命調べたものです。

鏡にむかうたびに(顔ではなく)心をお磨きなさい。鏡にはそういう効果もあるのですよ、とでも訳しておきましょうか。

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