新居の玄関は、靴や雑多なものが散らかっていることがないよう、家づくりの際にしっかりプランしたいものです。一級建築士の石川淳さんは、「玄関はちょっとした間取りの工夫で、いつもすっきりした状態のままをキープできる」と言います。プランニングで重要なのは、土間と収納と動線。自身が設計した3つの事例の竣工写真を交えながら詳しく解説します。

ポーチ側から玄関を見たところ
ポーチ側から玄関を見たところ。こんなにすっきりし見える秘密は?
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玄関は靴の収納場所と動線を工夫すればすっきりする!

外から見た玄関

帰宅するといつもたくさんの靴が散らかっている、片づけてもきれいに保てない。そういう家は多いと思います。それは玄関の靴の収納場所や動線のつくり方に問題があるからです。この問題をクリアすれば、玄関の大きさに関わらず、すっきりさせることは可能です。

では、筆者が設計した3つの事例をもとに具体的に解説していきましょう。

 

CASE1.玄関に大人用と子ども用の動線をつくってすっきり

玄関とシューズクローゼット

【この家のプロフィール】
・所在地:東京都
・家族構成:夫婦+子ども3人
・構造:木造2階建て
・延床面積:42坪

玄関が片づいて見えない大きな原因は、玄関土間に靴が何足も散乱していること。とくにお子さんがいるケースでは、今すぐははかない靴やサンダルが並んでいて、「はかない靴は片づけて!」と言い聞かせても、なかなか解消されない問題だと思います。

その解決策としてプランしたのがこの家の玄関です。

こちらの家の玄関は、写真の左側に上がり框(かまち)があり、その横にシューズクローゼットをつくりました。大人や来客は玄関入ってすぐの上がり框から出入りします。そして、子どもたちの玄関は、シューズクローゼットの先につくりました。

 

シューズクローゼット内部

つまりシューズクローゼットをウォークスルーにして、奥に子ども用の「サブ玄関」をつくったことで、玄関には、子どもの靴が散らからないようにしたのです。

 

シューズクローゼットのある玄関間取り

こちらがそのプランです。

じつはサブ玄関への動線をつくった理由がもうひとつあります。それは「帰ってきた子どもたちに、汚れた足でリビングに入ってほしくない」という建主からの要望。これをかなえるためにプランしました。

シューズクローゼットを通り抜けサブ玄関を上がれば、すぐ洗面・バスルームに直行することができます。手洗い習慣も身につきます。コロナ禍では、ぜひ参考にしてほしい間取りです。

 

CASE2.玄関土間に引き戸で隠せる土間収納をつくる

引き戸を閉めればすべて隠せる土間収納

【この家のプロフィール】
・所在地:東京都
・家族構成:夫婦+子ども2人
・木造2階建て
・延床面積:26坪

玄関に2つの動線をつくる面積がとれない、というケースのときに考えたのがこの事例です。

靴を収納する玄関収納の扉を、引き違いの大きな扉にしました。扉を閉めれば、そこは壁。見た目もすっきり。

 

引き戸の土間収納をつくった玄関プラン

こちらがそのプランです。

玄関を入って、右手に上がり框。左手に一見壁に見えるシューズクローゼットを設計しました。左右どちらにもあく、大きな引き戸の扉にしたことで、それほど広くなくても立って入ることも可能に。

また、普段あけていれば、子どもたちもおっくうがらずに、はかない靴やサンダルをしまいやすくなります。さらに来客時は、さっと引き戸を閉めればすっきり。ポーチ側からは、死角になっているので、そこに収納があることも気づかないかもしれません。

 

収納の内部の写真

土間収納は1.5畳あります。帰ってきたら、靴だけでなく、上着もこの玄関収納にしまうことも可能。ゴルフバッグや傘類のほか、三輪車程度大きさのものなら、十分収納できる広さです。