円安や資源価格の高騰が連日ニュースに。光熱費の大幅な上昇にもつながり、家計にも大きな影響を及ぼしています。そこで考えたいのが、光熱費がかからない家づくり。ZEH(セロエネルギーハウス)を実現した家を設計し、快適な暮らしを実現した東北芸術工科大学教授の三浦秀一さんに、財布にも環境にもやさしい家を建てるにポイントを聞きました。高気密・高断熱ではない住まいでも暖かく暮らす工夫も紹介!
すべての画像を見る(全7枚)現代の家は通風を重視して断熱がおろそかになっている
吉田兼好は『徒然草』の中で「家のつくりようは夏をむねとすべし」と述べました。「冬は(着込めば)いかようにも過ごせるが、夏はどうしようもないので、家は暑さ対策を基本につくるべし」という意味です。
これが昔からの家づくりの常識だったせいか、今も日本の家の多くは通風優先で断熱が貧弱です。結果、冬は脱衣所などの室温が低く、高齢者がヒートショックを起こして亡くなる例が後を絶ちません。これを防ぐためのキーワードが「高気密・高断熱」です。
高気密・高断熱で温度変化の少ない家に
上のグラフは三浦秀一さん宅の冬の温度グラフです。ゼロエネルギーハウス(以下ZEH)を目指した三浦さんの住まいは断熱性能が極めて高く、場所や時間による温度差がほとんどありません。
一般に住まいの省エネというと、住む人がエアコンの温度設定を加減して、夏なら暑さを、冬なら多少の寒さをガマンするというイメージがありますが、高気密・高断熱にすることで、家じゅうが快適な温度に保たれていることがわかります。
断熱材と太陽光発電などの創エネ装置でZEHを達成
省エネルギーをさらに進めたZEHとは、年間を通して家庭で消費するエネルギーと、太陽光発電などでつくるエネルギーの収支バランスが取れた家のことです。
これを実現させるための前提条件が、家の断熱性能を上げ、少ない冷暖房エネルギーで家全体の温度を保てるようにすること。三浦さんの家では天井に400㎜厚、壁面に220㎜厚のグラスウール断熱材と太陽光発電、太陽熱温水器などの創エネ装置、省エネ機器を組み合わせてZEHを達成しています。