ゆとりを生む居場所と聞いて、なにを思い浮かべるでしょう。人それぞれ、ゆとりを感じるポイントは違います。家族みんなが集まる居場所やひとりで使う居場所など、ゆとりを生む居場所のつくり方について、実際の事例を交えてご紹介します。教えてくれたのは、一級建築士の青木律典さんです。
すべての画像を見る(全9枚)お互いが気配を感じつつジャマしない、ゆとりある居場所
上の写真を使って、「家族が集まるための居場所」について説明します。一般的には、リビングを家族が集まる場とすることが多いものです。しかしこの事例では、学習スペースがそれにあたります。
家族それぞれが勉強をしたり、パソコン作業をしたり、本を読んだり。そんな場所を、リビングとは別につくりました。
学習スペースがあるのは、2階建て住宅の1階。2階のリビングと吹き抜けでつながっています。そのため、吹き抜けを通じて、家族同士が互いの姿を見下ろしたり見上げたりできます。
家族の気配を感じながら、ほどよく距離をとることもでき、互いが別々のことをしていても気にならない。そんな居場所があることで、気持ちにもゆとりが生まれます。
ダイニング隣に、小さなおこもり感ある居場所をプラス
次の事例は、ダイニングの横にある畳敷きのコンパクトなスペースが、ゆとりを生む居場所になったケース。本棚があって、家族にとって図書室のような役割をはたします。
壁につくりつけた本棚には、家族みんなの本が収められています。畳に寝転びながら本を読んだり、くつろげたり。
図書室の窓辺には、机としてもベンチとしても使える奥行きのあるカウンターをつくりつけました。自分の好きな体勢で、本を読んだり、お茶を楽しんだりできます。
じつはこの図書室は、床のレベルがダイニングよりも1段下がっています。天井の高さも、あえて低くしました。開放的なダイニングの雰囲気と異なる「おこもり感」をつくることで、自然とくつろげるように工夫されています。
コンパクトなスペースでも、こんな場所があると、ゆとりが生まれます。また、ダイニングに置きっぱなしになりがちなものも、ここに収納できて便利。ダイニングが、いつもスッキリとした状態を保てます。
ダイニングから図書室を見た様子がこちら。白い壁と天井の奥に、濃い茶色の場所があるので、一室につながった空間に奥行きが感じられ、広がりが生まれました。
つながってはいるものの、視覚的にも体感的にも「ダイニングとは雰囲気が違う場所」になっていて、気持ちも切り替わります。