5月8日は「世界卵巣がんデー」。2013年に世界の卵巣がん患者会のリーダーたちによって設立された、卵巣がんに関する重要なメッセージを伝える日です。第1回からこの取り組みに参加している「卵巣がん体験者の会スマイリー」の代表・片木美穂さんに、卵巣がんについて知っておきたい大切なことについて伺いました。

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「1人の女性も取り残さない」ために、卵巣がんについて知ろう

片木美穂さん
「卵巣がん体験者の会スマイリー」の代表・片木美穂さん
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卵巣がんは早期発見が難しいために進行した状態で見つかることが多く、女性のがんの中では生存率が低いがんです。2022年は「No Woman Left Behind ~1人の女性も取り残さない」をテーマに、卵巣がんを疑う症状や、治療のためのさらなる支援の必要性を全世界の人たちに知ってもらう活動を展開します。ぜひ、卵巣がんについて「自分ごと」として知っていただきたいと思います。

●卵巣がんは卵巣にできるものだけではない

子宮

「卵巣がん」は、卵巣、卵管、腹膜、および一部の原発不明のがんの総称で、30種類以上のタイプがあると推定されています。最も一般的なのは卵巣(上皮)の表面に発生する「上皮性卵巣がん」で、卵管がんと腹膜がんもこのタイプに含まれます。ほかにも卵巣の生殖細胞に由来する「胚細胞腫瘍」、結合組織細胞に由来する「性索間質性腫瘍」など診断される患者さんが少ないタイプもあります。

●卵巣がんの検診方法は、まだありません

現在のところ、科学的に卵巣がんによる死亡を減らすことが証明された検診がありません。自治体のがん検診では、20歳以上の女性は2年に1度の子宮頸がん検診を受けることができますが、この検査で卵巣がんを見つけることはできません。このため、卵巣がんは発見しにくく、がんが進行してから発見されることが多いのです。

少しでも早く卵巣がんを見つけるには、体調がおかしいなと感じたときに、それが卵巣がんの症状にあてはまるかどうかを知ること、そしてためらわずに婦人科を受診することが重要になります。

●卵巣がんを発症したときの特徴的な症状

腹痛

・腹囲の増加、持続的な膨満感
・食欲がない、すぐに満腹になる
・腹痛や骨盤の痛みがある
・尿意が強くなる、回数が増える

卵巣がんと診断された91%の女性がこれらの症状の1つ以上を感じていたと報告されています。生理不順や消化不良、更年期などにより女性が感じやすい不調ですが、こういった症状が治らずに続くときには卵巣がんの可能性を考えて、婦人科を受診することをおすすめします。

卵巣がんは乳がんや子宮頸がんに比べて患者数が少ないため、医師によってはがんではないと診察前から決めつけることがあります。不調が始まった時期、痛みの程度や頻尿の回数などとともに、卵巣がんの心配があることを医師に伝えれば、見逃しも減ると思います。なんでもなければ安心ですし、ほかの疾患を見つけられることもあります。ぜひ、勇気を出して婦人科を受診してください。

●卵巣がんになるリスクが大きい人はいる?

5月8日は「世界卵巣がんデー」
最大のリスクは、卵巣があること。つまり、卵巣を持って生まれたすべての女性が卵巣がんになるリスクがあると考えてください。ほかの病気などで卵巣を摘出していても、腹膜や腹腔内にがんが生じる場合もあり、リスクはゼロになりません。

血縁者に卵巣がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がんの病歴がある場合には、卵巣がんになるリスクが高くなります。ご自分の父母兄弟姉妹、父方と母方の血縁にがん患者がいるかどうかという家族歴を知っておくことは大切です。

また、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」による卵巣がんもあります。3親等(自分から見ておじ、おば、孫まで)以内に40歳未満で乳がんになった人、両方の乳房にがんができた人や卵巣がんになった人がいる場合には、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」のリスクがある可能性もあります。

ほかのがんと同じように、年齢を重ねることもリスクです。日本では40~69歳が罹患のピークになっていますが、若い人も高齢者も発症しています。特定のリスクはなく、女性みんなが罹患する可能性があると考えてもらいたいです。