作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。今回は庭に咲いたミモザを友人、家族、ご近所さんにおすそわけしたお話についてつづってくれました。

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第68回「そしてまた春の訪れ」

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●庭のミモザが満開になった

三寒四温を繰り返しながら桜は満開になり、街に活気が戻ってきつつある。片付けられずにいるストーブや厚手のセーターがタンスの中で窮屈そうだ。季節外れの大雪が降ったのがついこないだなんて信じられない。お隣さんから「高橋さんち、アカシアに雪が積もって斜めになっているけど大丈夫かな?」と、雪に押しつぶされそうなアカシアの写真が送られてきたのは3月のこと。ちょうど愛媛に帰っていたので、これは大変と夫に連絡して雪をどけてもらったのだった。

アカシアの木

 

そのアカシアの木に今はミモザの花が咲き誇っている。黄色い星のようなミモザは一枝、二枝花瓶にあるだけで部屋が明るくなる。しかし、こんなにどっさりと木に固まっていると、ブタクサにも思える貫禄ですなあ。いやあ見事だ。

通りかかる人が、「綺麗ね」と見上げていく。数年でよくぞここまで大きくなったものだ。三メートルを超えて家の二階のベランダより高くなってしまっている。ブーケやリースを作ろうと、ベランダから高枝切り鋏を伸ばして切っていく。洗濯干しがすぐ山になって、隣近所の方々へおすそ分けをする。みんな喜んでくれて、こっちの植物は何ですか? もうすぐ咲きそうですねと立ち話の花が咲く。

気をつけて剪定をしてはいるが、ミモザの枝が完全にお隣との垣根を超えてしまっていて「いつもすみません」とブーケを持って挨拶にいってみた。「全然大丈夫ですよ。綺麗ですねえ。ありがとう」と言ってくれてほっとした。

●友人や家族のためにミモザでリースを作る

ミモザの束

 

友人や愛媛の家族にリースを作って送ってあげようということになり、ベランダのミモザを運んでくる。部屋中が黄色に染まり、優しい香りに包まれる。部屋に花があるっていいなと、この頃特に思う。元気の出ないときも、植物の息吹きが気持ちを押し上げてくれる気がするからかな。

こないだは剪定されて落ちていた街路樹の桜の枝を夫がどっさりもらって帰ってきて、まるで家に桜の木が来たみたいに満ちていた。その枝ぶりや、自然の色や、ごつごつした表皮も、どの植物もみんな個性的でおもしろい。人間もそれぞれに自由でありたいと思う。

ミモザのリース

 

リースは、一枝で小さめの円を作り、方向を合わせて枝を重ねていく。ときどきモールで固定しながらボリュームをつける。誰かに教わったわけではないけれど、毎年やっていたらだんだんとコツがつかめるようになってきた。