作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。春の訪れを感じる今、そして不安定な今の情勢の中で、手を動かすことの大切さについてつづってくれました。

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愛媛と東京での二拠点生活。作家であり農家でもあり続けたい<暮らしっく>

第67回「日常に張り合いをくれる物たち」

暮らしっく
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●愛媛での暮らしも徐々になじんできた

一か月交代で実家の愛媛と東京の二拠点を行き来している。

愛媛では主に農業をしているので、発酵堆肥を作る会や、野生動物被害の対策会などにも顔を出すようになり、地元の人達にも少しずつ認識されるようになってきた。私が面白そうだから行ってみようと思う集まりには、大体自由で面白い人が集っていることも分かってきた。年齢的にはどこへ行っても一番若いので、先輩達からいろいろな事を教えてもらっている。

山々の麓の畑
山々の麓の畑

一日があっと言う間だ。この文章は、日が沈んで家に帰り、ご飯を食べお風呂に入った後、21時から書きはじめた。日中と夜でメリハリをつけて生活できるようになってきた。春は、種まきや柑橘類の剪定など、やることが山のようだ。

 

●おしゃれをしたい、でも新しいものを買わないのが我が家流

土を耕していると鳥がやってきて、掘り起こされたミミズを食べている。春のうららかな陽気に鳥の声を聞きながら、畦道に腰掛けてお茶を飲む時間が心地よくて、わざわざ車で街へ出て行かなくてもいいやとなる。会うのは近所のおじいさんおばあさんと、それから一緒に農業をしている仲間だけ…。そうなると、いつも作業着になり、おしゃれすることが殆どなくなってしまった。

いやいや。せめて、作業着をかわいいものにしたいなあ。ということで新たに買うのではなく、着なくなった服を入れた衣装ケースから、ちょっともったいないけど作業着にまわすのが我が家流である。動きやすく通気性のいい素材が重宝されるけれど、さらに気分の上がる服を着て畑に行くことを大切にしたい。