子育て世代にとって、「子どもの勉強を見てあげたい、でもなかなか時間が…」というのが現実。そこで考えたいのが、子どもがみずから進んで勉強する環境づくりです。「親の気配を感じながらも集中しやすい間取りや、自然に机に向かいたくなる間取りは、確かにあります」。そう話すのは、数多くの子育て世代の家を設計してきた一級建築士の守谷昌紀さん。実際に子どもが、希望以上の学校や最難関の大学に合格した。そんな5つのお宅を、自身の設計した事例から紹介してくれました。新築でもリノベでも実現できるプランです。

リビング学習の事例
近すぎず、遠すぎずの距離感が、リビング学習では大切!
すべての画像を見る(全29枚)

Case1.家族の顔を見ながらリビング学習できる間取り

リビング学習できる間取り

家族が集まるのは、やはりダイニングやリビングです。子どもが小さい頃は、常に親が見えるところにいたいもの。それがかなった環境で、自然と机に向かう習慣ができれば理想です。

 

構造上撤去できない柱がある家のスタディコーナー

こちらの事例はリノベーションです。どうしても構造上撤去できない柱があり、中央部に幅1.6mほどの通路ができました。

ただの広い通路ではもったいないので、家族を近くに感じながら勉強したり、本を読んだりするスペースにできないかと考えました。

 

親や家族の顔が見える間取り

スタディコーナーに座って本を読んでいても、少し顔をあげると、親や家族の顔が見えるのです。

 

座る位置によっては、親の顔が見えない位置もある

子どもが小さいときは、どうしても親の気配は感じていたいものです。ただベソをかいているときは、少し隠れていたいことも…。

座る位置によっては、親の顔が見えない位置もあります。それを自分で選択できるのです。

 

ロフト

切妻屋根の住宅は、どうしても建物中央部が暗くなりがちです。そこで、瓦の一部をガラス瓦に変更し、屋根裏部屋のグレーチング床を通して光を1階に落とす工夫をしました。

 

瓦の一部をガラス瓦に変更

リビング学習を念頭に置くなら、明るさにも十分配慮したいところです。

 

築46年たっていた日本家屋

リノベーションする前は、こんな状態でした。築46年の日本家屋の中央に光を取り入れることで、生き生きとした空間に生まれ変わったのです。

 

玄関も取りこんだ広々一室空間

玄関も取り込んで、広い一室空間としたことが、リビング学習の間取りに新たな可能性を与えてくれました。

 

外観

この家の外観です。勉強の合間に顔を上げれば、ウッドデッキの先に生えている庭木の緑が目に入ってきます。

 

Case2.リビング学習は、机の奥行きがいちばん大切

ダイニングテーブルのすぐ近くにスタディコーナーをプラン

2つ目の事例は、ダイニングテーブルのすぐ近くにスタディコーナーをプランしました。

 

中庭のある家の外観

周辺は工場等が立ち並ぶ環境で、明るさとプライバシーを確保するため、中庭を囲む間取りとしています。

 

中庭のある家の間取り

1階のすべての部屋が中庭に面しているのです。

 

もっとも重要なポイントは机の奥行き

リビング学習を考える際、もっとも重要なポイントは机の奥行きです。

一般的な学習机の奥行きは60cmほどですが、これをリビングに配置するとかなり出っ張り、邪魔になります。

じつは奥行きは45cmもあれば十分勉強できますし、スペースがない場合は35cmでもかまいません。イスが配置できるよう足元に空間があれば十分です。

このくらいの奥行きなら、造作家具と一体でつくれるので、リビング・ダイニングに統一感もでてきます。

テレビとダイニングテーブルの間にスタディコーナーを設けていますが、テレビが目に入らない位置が理想です。

 

和室からリビングのスタディコーナーを見る

できれば、天板のすぐ下に浅い引出があれば便利。浅いことが重要で、ペン類が入れば十分。深くしてしまうと、足に当たって、学習机の役割を果たしてくれません。

南や西からの強烈な光に比べて、北側から入る光はやわらかいもの。リビング学習に最適であることも覚えておきましょう。この家の場合は、北側に大きな窓を設けています。