●なにも見ずに感覚でつくってみよう! 失敗したって自分が食べる
きちんと計量せずに感覚でつくり始めたのは、この思いがきっかけでした。最初はもちろん失敗もたくさんしました。でも、「失敗したっていいじゃん! 自分が食べるんだから」と思うとなにも怖くなくなったんです。 すべての画像を見る(全10枚) 感覚は狂うもの。ずっと同じではないし、狂うために感覚があると言ってもいいくらい。わからなくなるし失敗もするから料理って楽しいんです。もともときっちりするのが苦手な性格。私があのとき「計量はもういいや! 感覚でつくろう」って思えたから、料理の楽しい扉が見つかったんだなと思っています。●食材や調味料は登場人物とスタッフ。不本意な姿はさらさない
私にとって、台所は食材と調味料たちの舞台。レシピが作品で、食材や調味料は登場人物&スタッフです。たとえば『カレンの台所』で紹介している鶏の唐揚げは鶏もも肉、ニンニク、ショウガが登場人物。スタッフがしょうゆ、酒。片栗粉、小麦粉、塩コショウ、鶏がらスープの素、ゴマ油、オリーブオイル、ビニール袋、キッチンペーパー。料理をしているときは、頭の右斜め上あたりで食材たちだけの世界が浮かんできます。登場人物とスタッフが繰り広げる物語です。『カレンの台所』では、この世界をイラストで表現してもらっています。この妄想に入っていく瞬間がすごく好き。自分と食材たちの物語に会えるから、また料理したいって思えるんです。
つくり方を写真でなく絵で描くのは、本づくりで強くこだわったポイントです。写真だと食材にとっては不本意な姿で見られてしまうからです。私はモデルのお仕事もさせていただいていますが、食材にとって、料理中の姿は着替える前の下着姿を撮られているようなもの! 『カレンの台所』には巻末にレシピごとのキャスト&スタッフリストをつくってエンドロールも流しています。
●唐揚げのハードルはエベレスト級。準備運動を軽くしたかった
唐揚げに使うニンニクやショウガは、すりおろし、チューブどっちでもOK。揚げ物の中でも、鶏のから揚げはエベレスト級。揚げ物が怖くてできないという知人はたくさんいるし、私もから揚げにばかり負けていた時代がありました。いっぱい向き合ったのに喧嘩ばかりして、全然うまくいいきませんでした。今は少し仲よくなれましたが、揚げ物に困っている気持ちはとてもよくわかります。だから、揚げるという山を昇る前の準備運動をできるだけ軽くしたいと思ったんです。面倒なこと(すりおろし)をひとつでも減らして肩の荷が降りるなら、から揚げに挑戦する気持ちが湧いてくるかもしれません。私自身も、すりおろしを使ったところで味の違いはよくわかりませんし(笑)。
料理は生物なので、このから揚げもつくるたびに味は変わります。この本に載っているから揚げと同じものは、もうつくれません。入れる調味料の種類や量が毎回違うから、違う物語になるんです。
自分だけの味、自分だけの作品。いつも違うから、料理って楽しいんだなと思います。
滝沢カレンさんへのインタビュー、次回は料理を楽しむコツや大好きな器について。10/7(木)公開予定なのでお見逃しなく! 『カレンの台所』掲載のシュウマイレシピもお届けします!