●レシピ本大賞はノミネートされていることも知らなかった

『カレンの台所』は、私と食材たちの物語を1冊にまとめたレシピ本。私は数字に惑わされずに、ただ自由に感覚を頼りにして料理をつくるんです。だから分量や具体的な手順はこの本には載っていません!
書籍と女性
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レシピ本を出すのはもちろん初めてで、初めて足を踏み入れた世界。プロの料理人さんやすごい主婦の方々の時短レシピなど、いっぱいある中で私が大賞をいただくなんて妄想すらしていませんでした。そもそもノミネートされていることすら知らなくて、授賞式の日が来るまでドッキリじゃないかと疑っていたほど。

授賞式では大号泣。この世に「料理」があってよかったです。

●17歳で料理デビュー。ジャングルでさまよっている人でした

料理を始めたのは17歳になってからです。どこで料理の情報を得たらいいかすらもわからない。ジャングルでさまよっているみたいに、感覚がまったく違う方向を見ていたと思います。 がんばってつくっても、「あぁ、今日も食べられない」という日が続いたり。でも私、負けず嫌いなんです。失敗ばかりして、あともう少しで料理を嫌いになっていたかもしれないけれど、「なんでから揚げなんかに負けなきゃいけないんだ!」と思うと悔しくて。これから先、から揚げの扉が遮断されたまま残りの人生を過ごすのはイヤだ」って思ったんです。料理ができればモテるはず、という気持ちも当時はありました(笑)。

●スマホと手元だけ見てつくっていたら、なんだか寂しい気持ちに

料理を持つ女性
インスタライブより
そのうちにクックパッドの存在を知り、テレビの料理番組のレシピ画面を写メして「よし、今晩つくってみよう」ということを繰り返して、だんだん料理はできるようになりました。でもあるとき台所で「あれ、私は今なにをやってたんだっけ?」と思ったんです。 スマホでレシピを見て、ずっと下を見て料理していたから、たとえばハンバーグは完成していてもハンバーグをつくった記憶がない。「これでいいのかな、これって料理できるって言えるのかな?」と寂しい気持ちになりました。 だれかが考えてくれたレシピに私は助けられているけれど、感情のない味になってしまっている気がして。何度つくっても同じ味、感情のない味。毎回同じレシピを見て同じものをつくることを繰り返すだけで、レシピとはそのときだけのつき合い。親友にはなれない、と気づいてしまったんです。今思うと、だれかの道をずっと歩くだけだったんですね。