献立を考えて料理したり、手順を工夫しながら掃除したり…。単調に思える毎日の家事には、じつは脳を活性化する要素が詰まっています。脳の専門家の加藤俊徳さんも、「毎日なにげなく行っている家事は、じつは脳のトレーニングにぴったり」と語ります。家事をとおして上手に使えば、脳はスムーズに働くようになり、いくつになっても成長し続けられるのです。
そんな加藤さんの考えをあと押ししたのが、今日1月21日に100歳を迎えた生活評論家の吉沢久子さんとの出会いでした。
「雑誌の取材で、脳のMRI画像を撮らせていただいたとき、当時90代と思えないイキイキと若々しい脳に驚きました。日々の家事のなかでも五感をフルに活動させ、新鮮な感動や驚きを忘れない吉沢さんの暮らし方は、“脳トレ家事”の生き証人です」。今回は、そんな吉沢さんの暮らしをご紹介します。
毎日の家事を見直せば、いくつになっても元気な脳に
“脳トレ家事”を意識すれば、毎日が楽しくなり、アンチエイジングにもつながります。吉沢さんの若々しさの秘訣、ぜひ参考にしてみてください。
●90歳を過ぎても進化する吉沢さんの脳
吉沢さんの脳のMRI画像を、年齢で比べたものがこちら。思考をつかさどる、前頭葉の先端部分・超前頭野(思考系脳番地)を通過する神経線維の枝ぶりが、右脳、左脳ともに太く成長しているのがわかります。 ※出典:『家事で脳トレ65』 主婦の友社刊
●観察しながら野菜を育てる
庭で季節の野菜を育て、料理に使うのが吉沢さんの楽しみ。
なんと、稲も育てています。「“お米の花”を一度も見たことがないと気づいてから、自分で育ててみたくなったんです」。知らないことへの旺盛な好奇心と行動力がさすがです。
●季節の手仕事をする
四季折々の食材を使った保存食づくりは、吉沢さんの年中行事。「大好物の紅ショウガは、いただきものの赤梅酢を使って、毎年10月につくります。年末には、知人に手伝ってもらってゆべしづくりをします」。
●旬のものを食べる
旬の食材は、味がよく栄養もたっぷり。「庭で育てた野菜や、いただきものなど。旬のものはそのまま食べてもおいしいし、どんなふうに料理しようか考えるのも、その時季ならではの楽しみです」。
●手入れして長く使う
「真ん中に穴のあいた木ベラは、ソースを混ぜるときにも軽くて使いやすいの」。すりこぎは、庭の山椒の木が枯れたときに、大工さんがつくってくれたもの。
こまめに研いで使っている包丁は、なんと20年以上も愛用しています。日頃のケアが、長もちの理由です。
●遠方の人ともこまめに交流
いただきもののお礼や、読者からの手紙への返事も必ず書いているという吉沢さん。「世代が違う人とのやりとりも多く、新しい発見がたくさんあります。きれいなハガキを用意し、気負わず書くようにしています」。気が向いたときにサッと動けるよう準備しておくのも、老けない家事のヒントです。
●動線を考えて使いやすく配置
お取り寄せが大好きという吉沢さん。宅配便が届いたときもあわてずにすむよう、玄関先のスリッパの横にハンコを置いています。
「代引き用の小銭も玄関近くに置き、スムーズに対応できるようにしています」。
●気負わずに人を招く
「掃除は以前ほどできなくなったけれど、気にせず人を招きます」。玄関からすぐの部屋が来客用のスペース。テーブルには手入れの手間がなく、長もちする花を飾っています。「お花もルーペを使って観察すると、肉眼で見えない小さな部分までよく見えておもしろいものです」。身近なものを観察したり、疑問に思ったことを調べるようにすれば、生活のなかに新しい発見があります。