設備や間取りは最小限の変更で、素材感豊かな住まいを完成させたMさん。設備や間取り変更にかかるコストを減らした分、仕上げの素材にはしっかりしたものを選ぶことができました。ダイニングの折り上げ天井の中はラフな足場板、壁と天井は珪藻土で仕上げています。また、リビングの一角の壁をモールテックスで仕上げ、可動棚とデスクを設置。植物や絵本などをディスプレイして楽しんでいます。予算内でマンションをリノベーションし、好みのインダストリアルな空間に生まれ変わったMさんのお宅を訪ねました。
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板張りがラフなイメージの壁面収納にエアコンも埋め込んでスッキリ室内窓を設けて、光が行き交う心地よい空間にほんのりとしたレトロ感があるキッチンは既存のまま船舶照明やアイアン塗装で既存の魅力をうまく引き出す間取り(リノベーション前後)板張りがラフなイメージの壁面収納にエアコンも埋め込んでスッキリ
アウトドア好きで、インダストリアルなテイストが好きというMさん夫妻。長男の誕生を機に、光熱費のかさむ寒い賃貸住宅を出て念願のマイホームを持つことを決意。この物件は、住戸上部にルーフテラスがある点に魅力を感じたそう。
契約前に、自分たちのやりたいリノベーションが実現可能か確認するため、リノベーション会社・フィールドガレージの原直樹さんに相談。大急ぎで提案をしてもらうと自分たちの好みにドンピシャだったので、依頼することを決めました。
しかし物件価格が予算をオーバーしていたため、リノベーションの規模を縮小し、予算を調整することに。「最初は設備もすべて刷新するつもりでいましたが、現場調査の際、原さんが水回りはこのままでもいけそうだというアドバイスをくれたので、できるだけ既存を生かす形で進めてもらうことにしました」と夫妻。
既存のインテリアは、大理石やゴールドの金具などを用いたラグジュアリーなテイストで、夫妻の好みとは真逆。そこでアイアンや足場板、珪藻土といった素材を使うことでまったく違うイメージにつくり変えることにしました。
板張りがラフなイメージの壁面収納は、奥行きが深くて容量もたっぷり。インダストリアルな雰囲気のテレビボードは以前から使っていたもので、このテレビボードに合わせて壁面収納を設計。エアコンも組み込んですっきりと収めました。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
夫33歳 妻34歳 長男3歳
▼リノベを選んだ理由
既存のインテリアが自分たちの好みとは真逆だったため。ただ、物件価格が予算オーバーしていたので、既存をうまく生かして予算の範囲内で好きなイメージにつくり変えることに。
▼住宅の面積やコスト
専有面積/83.00㎡ 築21年(平成10年築) 工事費/690万円(税込み、設計料別)
室内窓を設けて、光が行き交う心地よい空間に
リビングの天井は、コンクリートの躯体現しとしました。正面は塗装の仕上がりに納得がいかず、リノベーション会社・フィールドガレージ代表の原さんが自ら塗り直したというこだわりの壁です。
階段室のリビング側の壁に内窓を設けたことで、光が行き交うようになりました。
階段室の吹き抜け空間にエキスパンドメタルの床を張り、ルーフテラスへの出入りをラクにするとともに、かさばるアウトドア用品の置き場所に。日当たりがいいのでシュラフなどを干すのにも重宝。長男が上からヒモを垂らして釣り遊びをすることも!
ほんのりとしたレトロ感があるキッチンは既存のまま
キッチンは基本的に既存を利用。収納も充実していて、人造大理石の天板やタイル貼りの壁などしっかりした素材が使われているのと、ほんのりレトロ感があるのも好ましいと考えました。
右側がキッチン入り口。「構造壁があってオープンにはできませんでしたが、料理中のゴタゴタがリビングから見えないので、かえってよかったです」(妻)。
洗面室のドアを挟んで左側のニッチ(既存)には、有孔ボードを張ってカバンや帽子を掛けられるようにし、おしゃれに活用しています。
リビングの入り口にはガラスのスライドドアを新設しました。
ダイニングに隣接する日当たりのいいスペースは、現在はキッズスペースとして活用。夫が以前から使っていた古家具が窓辺に収まり、おもちゃなどをしまうのに活用しています。
隣接するキッチンから子どもの様子が見られるように、既存カウンターを残して開口を設けました。
船舶照明やアイアン塗装で既存の魅力をうまく引き出す
大理石の洗面台は、素材のよさを生かしてそのまま利用することに。シンプルなデザインのミラーも既存のまま。新たに船舶照明を合わせて、自分たちらしさを演出しました。
タイル貼りで印象のよかったユニットバスも、状態がよかったのでそのまま利用することに。ユニットバスは交換すると高くつくので、大幅なコスト減に貢献できました。
トイレ内の手洗いコーナーは大理石天板の素材感が好みに合わなかったので、アイアン塗装を施し、明るい色だった扉は濃い木目調に変更。ゴールドのハンドルをアイアンに交換しました。
さらにモルタル調のフロアタイルと船舶照明でMさんたちらしい味つけをしました。
玄関収納はすっきりしたデザインと状態のよさから、こちらも既存を利用。白かった天板にはアイアン塗装を施し、土間はモールテックスでモルタル風の仕上げに。扉のハンドルはアイアンに交換しました。
廊下の壁一面にはネイビーのアクセントクロスを貼り、落ち着いた雰囲気に。Mさんのお宅には、既存をうまく生かしながら、予算内でオリジナリティのある住まいを実現するアイディアがたくさん詰まっています。
間取り(リノベーション前後)
リノベーション前
リノベーション後
設計・施工/フィールドガレージ
自由な暮らしを提供したいという思いから、2004年にリノベーション専門の設計事務所を設立。現在は工事の請負、不動産仲介も手掛け、リノベ向きの物件探しからローン審査・売却、賃貸管理のお手伝いまでトータルにコーディネートしている
撮影/飯貝拓司 ※情報は「リライフプラスvol.32」取材時のものです