距離が必要なのは親子も同じ。離れることで良好になった母との関係
「離れていい関係になる」のは、夫婦だけでなく親子でも同じだと感じています。
90歳になる私の母は、85歳から施設に入居しているのですが、ひとり暮らしをしていた頃はそれなりに元気だと思って、たまにしか顏を出していませんでした。でも、母が私たちのことも考えて自ら高齢者施設に入ると言い出したとき、やっと母のことに思いをはせるようになったのです。
もっと話をしなくては。施設で退屈しないように、快適に過ごせるように考えなくては。直接的な介護をしない分、それ以外のこと。居室を居心地よく整えたり、おいしいものや暇つぶしのものを差し入れたり、生活のサポートをできる限りしてあげたいと思いました。
幸い母はパソコンが使えたので、iPadを渡し、LINEやメールの使い方、お気に入りサイトの登録の仕方など入居前に猛練習。そのかいあって、コロナ禍で月に1回しか会えない今も、LINEのビデオ通話で顏を見ながら世間話ができています。
すべての画像を見る(全7枚)子どもの頃は、厳しい母とはあまり会話もしなかったのに、この年になって、母が好きな氷川きよしさんの新曲情報をLINEで話す日がくるとは夢にも思いませんでした。もしも同居などしていたら、きっとけんかばかりで優しくできなかったと思うと、母の決断には感謝しかありません。
●50歳をすぎて、家族の形や暮らし方について思うこと
夫婦や親子は、距離や形式、思い込み、世間の常識などに縛られて「こうあるべき」と考えがちです。でも、50歳すぎて、つくづく思います。夫婦や家族の形、暮らし方や絆のもち方は人それぞれ。自分たちにとって幸せならば、それでいいはず。
単身赴任自体は、リモート、オンライン化の流れにのって今後減っていくと思いますが、逆に、辞令ではない自由意志で2拠点生活を選ぶ夫婦もいるでしょう。ちなみに、私の姉夫婦は介護別居で2拠点生活を実践中ですが、毎日LINEを送り合い、励まし合いながら楽しく暮らしているようです。形を変えながら続いていくのが、家族なのかもしれない。夫を見送り、母を見守る年になって、そんなことをしみじみと感じています。
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【佐藤由香さん】
生活情報ライター。1968年埼玉県生まれ。編集プロダクションを経て、2011年に女性だけの編集ユニット「シェルト・ゴ」を立ち上げる。料理、片づけ、節約、家事など暮らしまわりに関する情報を中心に、雑誌や書籍で執筆。