昨日まで元気だった家族が突然亡くなる…。
なかなか身近なこととして考えられないことかもしれませんが、想像もしない事態はだれの身にも起こり得ることです。
ESSEをはじめさまざまな雑誌で活躍するライターの佐藤由香さん(52歳)は、新型コロナウイルス禍で緊急事態宣言措置が実施されていた今年の5月に、当時56歳の夫が突然死で亡くなるという経験をされました。
突然の夫の死に、どう対処し、どう向き合ってきたのか。今回は、「倒れている」という連絡を受けてから、実際に夫の遺体と対面するまでのお話をつづっていただきました。
元気だった夫がまさかの突然死。それは1本の電話から始まった
「ご主人が部屋で倒れているようです。すぐ来てください」
その電話がかかってきたのは、緊急事態宣言真っ最中の5月のことでした。
夫は10年目の単身赴任生活に入ったところで、私は、東京で仕事を続けながら、月に1回、夫の住む街に通うという二重生活をずっと続けていたのですが、コロナ禍で1か月以上会えていませんでした。そんなさなかに、「まさか」の事態は起こってしまいました。
「わかりました。すぐ行きます!」
とはいったものの、夫の住まいは東京から800km以上離れており、どんなに急いでも半日近くかかります。航空会社のアプリを開いたものの、頭が真っ白でログインパスワードも思い出せず指が震えて、運航ダイヤを開くこともできない。
「どうしよう…どうしよう…。あ、そうだ。電話!」と思い、航空会社に電話すると、その日の便はすでに終了したというアナウンス。
そう、緊急事態宣言で大幅に減便していたのです。であれば、新幹線しかない。
その場にいた仕事関係者に事情を伝え、「落ち着け落ち着け」と自分に言い聞かせながら駅に向かって歩き、身内に事の次第を電話しました。そして、東京駅に着く途中でまた夫の会社の人から電話が入り、すでに亡くなっていることを知らされたのです。
間に合わなかった…。もう、急いで行く必要はなくなってしまった。だれにも看取られず、夫はひとりで静かに旅立ってしまいました。
●夫は病院じゃなくて警察にいた
コロナ禍で、ほとんど乗客のいない新幹線。ぼうぜんとしていると、電話がどんどんかかってきます。
まずは警察。
夫は自分のベッドで寝たまま亡くなってしまったため、病院には行かず、警察所に安置されること。財布の中にあった診察券からかかりつけ医が分かり、検視をお願いすること。希望があればCTをとって調べられるが、これには料金がかからないこと。
自宅で、ひとりで亡くなったため、事件性がないかどうか調べる必要がある、などの説明がありましたが、解剖とはいわれませんでした。解剖に関してはケースバイケースのようです。
そして、会社の人からは、私を駅で待っていてくれるという連絡も入りました。
夫が会社に来ないことを心配して家に行ってくれたのも、救急車を呼んでくれたのも、社内外に連絡して仕事に支障がないように計らってくれたのも、すべて部下の方たちです。