●睡眠がたりているつもりの人でもじつは睡眠不足

睡眠研究の世界で有名な実験があります。アメリカのウィリアム・C・デメント教授が行った実験で、健康な人8人に4週間、眠りたいだけ眠ってもらったというものです。
実験前、全員が「自分の睡眠に問題はない」と言っており、その平均睡眠時間は7.5時間でした。ところが実験から3週間後、彼らの平均睡眠時間は8.2時間でほぼ一定しました。つまり、彼らの適正睡眠時間は平均8.2時間であり、実験前は40分の睡眠不足状態にあったということです。

ここで留意してほしいのは、彼らが睡眠不足状態であることをまったく自覚していなかったということです。たった40分、と思うかもしれません。しかし、日々の睡眠不足は本人が気づかないうちに蓄積し、いわゆる「睡眠負債」となって溜まっていきます。この時季はぜひ普段より早めに床に入るよう心がけてみてください。

●寝つきがいいから大丈夫ではない。じつは睡眠不足の裏返しかも?

ソファでスマホをもって眠る女性
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コロナ渦以前、私はときどき岩盤浴に行っていました。岩盤浴の室内は非常に高温多湿です。お世辞にも「いい睡眠環境」とはいえません。にもかかわらず、毎回、横になって数分もたたないうちにいびきをかいて眠りだす人がいるのです。

普通に考えれば、こんな高温多湿の環境で人は気持ちよく眠れるはずがありません。しかしこれほど睡眠に適さない環境下で、横になった途端に眠ってしまうということは、それだけ強い「睡眠圧」がかかっているのではないかと推測します。

慢性的な睡眠不足が続くと、週末に「寝だめ」をした程度では蓄積された睡眠負債は解消しません。そんな状態で横になり目を閉じたら、一気に睡眠圧が押し寄せて睡眠世界に引き込まれてしまっても無理はありません。

実際、「どこでも眠れます」「布団に入ったらすぐ眠れます」という人は、ほとんどが睡眠不足である場合が多いのです。

【まとめ】自分が睡眠不足でないか、一度考えてみよう

今や日本人の3人に1人が睡眠に関わる問題を抱えています。睡眠不足は仕事や勉強の能率を低下させるだけでなく、生活習慣病やメタボリックシンドロームと深く関係しています。もちろん、まだ体力があるうちは多少の睡眠不足であっても、なんとか持ちこたえることはできるでしょうが、年齢を重ねるにつれどんどんつらくなっていくので、なるべく睡眠時間は優先して取る工夫をしていただきたいと思います。

春の眠気は太陽光に影響される私たちの生体リズムが原因ですが、「眠いのは季節のせい」と片づけてしまう前に、その眠気が慢性的な睡眠不足によるものではないか一度立ち止まって考えみるといいのではないでしょうか?