「睡眠負債」という言葉が話題です。

日々の睡眠不足が借金のように積み重なり、心身に悪影響を及ぼすおそれのある状態のこと。たかが寝不足とあなどっていると、うつ、がん、アルツハイマー、高血圧、肥満など、深刻な病気につながる危険がひそんでいます。

よかれと思って実践していることが、睡眠負債を増やす原因になっているかも!?
ここでは睡眠研究のパイオニアである、医学博士の白川修一郎さんに、正しい情報を教えてもらいました。

睡眠負債
「寝る前にホットミルク」は熟睡を妨げる可能性が(写真はイメージです)
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睡眠負債を増やす原因に!?よくある睡眠常識の間違い

世間で常識と思われている睡眠についての知識は、じつは間違っていることも。新たな研究などで、快眠のための常識も変化しています。正しい知識を身につけて、正しい睡眠をとりましょう。

●「睡眠のゴールデンタイム、夜10~2時に眠っていればOK」は間違い!

細胞の再生に欠かせない成長ホルモンが、夜10時~深夜2時にしか分泌されないというのはウソ。眠りについてから3時間以内にぐっすりと深い眠りに入れば、何時でも分泌されます。大切なのは、眠りの深さと質です。

●「目を閉じているだけでも眠っているのと同じ効果がある」は間違い!

目を閉じるとかなりの情報が遮断されるため、脳をある程度休ませ、一時的にすっきりさせることはできますが、睡眠と同じ効果はまったく得られません。横になり、きちんと眠りに入ってこそ、心身ともに真に休むことができるのです。

●「5分間の二度寝でスッキリ起きられる」は間違い!

二度寝は長さに関係なく、睡眠のリズムを崩すもとに。すっきり起きたつもりでも、睡眠と覚醒を切り替える体温のメリハリにも影響し、日中にうつらうつらする原因にもなってしまいます。短くても二度寝は避けるのが賢明。

●「ノンレムとレム睡眠の周期、90分単位で寝ると目覚めスッキリ」は間違い!

ノンレム睡眠(深い睡眠)とレム睡眠(浅い睡眠)の周期は70~110分で、平均が90分。周期がきっちり決まっているわけではありません。
また、レム睡眠で起きるといいという説も間違いで、レム睡眠で起きたときも結構眠気が強いそう。周期にこだわらず、ぐっすり眠りましょう。

●「寝る前にホットミルクを飲むとぐっすり眠れる」は間違い!

牛乳には睡眠促進ホルモンを生成するアミノ酸・トリプトファンが含まれますが、生成までに時間がかかるので寝る前に飲んでも意味なし。むしろ睡眠中に胃に負担がかかり、熟睡を妨げることにもなりかねません。

睡眠負債を貯めないために…夜寝る前にできること

白川先生に、夜寝る前にできる、よく眠るための生活習慣を教えてもらいました。
睡眠不足に悩んでいる人は、ぜひ取り入れてみてください。

夜の猫

●カフェイン・アルコールは寝る3時間前でストップ

覚醒作用や利尿作用があるカフェインはもちろん、アルコールも睡眠の質を大きく下げるもと。微量のアルコールは興奮作用があり、寝酒は逆効果です。どちらも就寝の3~4時間前には摂取を控え、量もほどほどに。

●寝る2時間前からスマホやパソコン、ゲームはNG

スマホやパソコン、タブレットなどのデジタル機器からは、脳を興奮状態にするブルーライトが発光。また、ゲームやSNSは感情が揺さぶられて眠りに入れない要因に。興奮を鎮めるには、寝る1~2時間前から使用を控えましょう。

●寝室の温度は18~26℃に保つ

環境も睡眠の質を左右します。寝室の温度は18~26°C、湿度は70%以下が理想的。家族で快適温度が違う場合は低い方に合わせ、上がけなどで調節を。

●入浴は寝る30分前に。入眠儀式も取り入れて

体の深部温度が下がると眠くなります。体温を下げるには、寝る30分前に40°Cのお風呂にゆっくりつかるのが効果的。パジャマに着替える、歯みがき、トイレに行くなど、眠る前の習慣=入眠儀式も、寝つきをスムーズに。