●タブーと言われていた運動で腎機能を守る

慢性腎臓病の治療には、食事療法や薬物治療に加え、生活習慣の見直しと改善が必要です。しかし、運動については、運動することによってタンパク尿が増加したり、腎機能が低下するからと「安静第一」が基本条件でタブーとされてきました。

ところが、その後の研究で運動によってタンパク尿が増えるのは一過性のものだとわかり、適度に運動を続けたほうが長期的にみて腎機能の維持につながり、心血管疾患のリスクを抑えられることがわかったのです。また、透析治療の開始後であっても、運動をすることで透析効率がよくなり、衰えていた体力や筋力が戻るケースもあるようです。

腎機能を守るためには、ウォーキングなどの有酸素運動と、筋肉に抵抗をかけるレジスタンス運動が必要です。ウォーキングは15~20分/kmほどの速さで歩くとよいでしょう(短い距離から徐々に延ばす)。レジスタンス運動は、現状の運動能力をチェックしたうえで、低下している能力を補います。強度が強すぎると心臓に負担がかかり、弱すぎると効果が得られないため、適切な運動強度が大切です。ご自身の腎機能の重症度ステージや体調と向き合いながら、無理せずに行いましょう。

●足の筋力をみる「立ち上がりテスト」

立ち上がりテストイラスト
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A:高さ40cmほどのイスや台に腰掛け、両腕を組む。片足(どちらの足でもよい)を軽く前に伸ばしたまま、反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒間キープする。

B:高さ20cmほどのイスや台に腰掛け、両腕を組む。両足は肩幅くらいに広げ、床に対してすねが70度ほどにする。反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒間キープする。

・Aはできないが、Bはできるという人

足の筋力低下が始まっています。このままでは立つ・歩く・座るなどの移動能力が下がっていきます。

・AもBもできないという人

ロコモティブシンドロームの可能性があり、将来寝たきりになるリスクが非常に高いです。

このテストができない人は、足全体の筋力が弱く、階段を上るのに手すりが必要ではありませんか? 日常生活の中に積極的に足(太もも前やハムストリング)、お尻の筋肉量を増やすトレーニングを取り入れましょう。

●太ももトレーニング「腰かけスクワット」

腰かけスクワットイラスト

(1) 高さ40cmほどのイスや台に浅く腰かける。

(2) (1)の状態から立ち上がり、(1)の状態に戻る。これをゆっくりと指定回数くり返す。

<指定回数>

慢性腎臓病の重症度ステージによって回数が異なります。GFRを算出し、ご自身のステージに合ったものを行ってください。また、タンパク尿が出ている人、G4、G5、透析患者さんは運動を開始する前に必ず主治医に相談してから行いましょう。

運動を毎日行い、運動習慣をつけることで腎機能の低下を食い止めることができます。腎機能の低下を放置すると、食事に制限が出たり、生涯にわたり人工透析をせざると得なくなったり、腎移植が必要になる可能性が高まります。

いつまでも元気に、不自由なく生活できる体を手に入れたいのであれば、自分の腎臓としっかり向き合いましょう。
大山先生監修のムック『

腎機能を運動で守る

』(扶桑社刊)では、さらに詳しい運動法が掲載されています。ご自身のGFR区分を調べたうえで、ぜひやってみてください。