加齢とともに「昔似合っていたはずの服が似合わなくなった」と悩む方は少なくありません。「昔にこだわらず、この年代ならではのおしゃれを楽しみましょう」と提唱するのは、スタイリストの地曳いく子さん。60歳からのおしゃれについて綴った新刊『新しい大人おしゃれ道』を上梓した地曳さんに、話を聞きました。
すべての画像を見る(全2枚)60代でおしゃれに変化が。年齢を受け止め、今の自分を楽しむために
――現在67歳の地曳さん。60代を迎えたとき、50代までとの違いに戸惑われたそうですね。
地曳さん(以下、地曳):40代、50代は、その前の年代の勢いをひきずっていけたんです。だから60代も一緒だと思って、実際になってすぐは「これからは映画がシニア料金で見られてラッキーだわ」くらいの気持ちでした。今どきの60代って、孫がいても普通に働いていたり活動されていたりして、かっこいい女性が多いですしね。
でも、62歳、63歳と齢を重ねるにつれ、じわじわと変化を感じるようになりました。ホルモンバランスが変わって鬱々とするし、昔似合っていたものが似合わなくなったり、好きな音楽もピンとこなくなったり。前は「一生ロックが好き!」と思っていたのに、疲れていると大きい音がしんどくなったし、ライブで2時間立ちっぱなしもきつくなりました。それが40代、50代では感じなかった大きな違いです。
振り返ってみると、大きな山は、60歳よりも65歳でした。そこを乗り越えるために、50代の気持ちがまだ残っている60歳なりたてのうちに覚悟をし、備えておくことをおすすめしています。
――「昔似合っていたはずの服が似合わなくなる」というのは、多くの方が抱える悩みだと思います。
地曳:読者の方にも「昔の服がなぜ似合わないんでしょう」とよく聞かれるのですが、体型も時代も違うから、実は当然なんですよね。だからこそ、無理をせず、変化を受け入れて、今の自分に似合う服を楽しんでほしいと思います。
――具体的には、なにをすればいいでしょうか?
地曳:まず第一歩として、クローゼットの総点検をしてみてください。洋服もバッグも、一回全部出してみる。白日の下に晒して、まずどれだけもっているか確認。そして見るだけではなく、一度全部着てみるのです。一気にやるのはしんどいですから、少しずつでもかまいません。
するといろいろなことがわかります。サイズが合わない、キツい、重い、生地が劣化している、着られるけどピンとこない、老けて見える…。これらはすべて処分対象です。
今なら、たとえば冬物のセーターを全部出してみる。自分のもっているセーターの多さにびっくりするはずです(笑)。そうやって、自分がもっているものと向き合って、本当に今必要な服だけを残していきましょう。
常識にとらわれなくてOK。今の自分に似合う服の吟味を
――書籍では、「かつての鉄板アイテム、白いTシャツとシンプルシャツにさよならを」と書かれています。これらは世代的には定番のイメージがありますが、注意すべき理由を教えてください。
地曳:60代以降で「シンプルイズザベスト」が似合うのは、週3回ピラティスに行くとか、毎日スイミングに行くとか、運動量の多い人だけです。この世代は、コロナ禍もあって、基本運動量が落ち、気づかないうちに体がゆるんでいます。そんなゆるんだ体には、昔のシンプルな服は似合いません。それが着たかったら運動するしかないんです。
私自身、白Tが大好きで何枚も持っていたお助けアイテムでした。ところが突然似合わなくなったのです。あんなに好きな鉄板アイテムだったのに。シンプルなシャツもかつてはマストアイテムといわれていましたが、似合うシャツがなかなかない、もしピンとこないと思ったら、着なくてOK。
今、スマホの見すぎで前傾姿勢の人が増えていますが、前傾姿勢から巻き肩になってしまうとシャツが似合わなくなりますし、お手入れの面倒さとも相まって、今やシャツは、嗜好品的存在。それよりは、家で洗えるブラウスがおすすめです。
ただし65歳過ぎてバストの位置が落ちてボタンがたくさんあけられるようになってくると、またシャツが似合うようになったりしますので安心してください。
――定番アイテムでいうと、デニムはどうでしょうか?
地曳:今はデニムの生地が進化して、ストレッチが効いています。ちょっと太ってもそのままはけてしまうので、サイズの違いに気づかなくなるというデメリットも。また、ストレッチは伸びすぎると補正力がなくなってしまいます。大人世代は、ストレッチもするけれど、少し抑えてくれるようなものを選ぶ方がきれいだと思います。
昔はかたいデニムを無理やりはいていたから、太らずに済んでいたのに(笑)。便利になると退化する部分があるということですね。

