53歳でスペインに単身留学し、そのあとも帰国せずに異国でひとり暮らしを続けているRitaさん(56歳)。現在はジョージアの港町・バトゥミで「旅暮らし」を実践中。そんなRitaさんですが、移住を機に思いきって荷物を大量に手放し。持って行ったものは、なんと20kgのスーツケース1つとわずかな手荷物のみ。今回は、「少ないもので暮らす幸せ」について語ってくれました。

スーツケース
すべての画像を見る(全7枚)

スーツケース1つでジョージアへ

3年前、日本を出発するときに持っていたのは、スーツケース1つとリュック1つだけでした。日本に残した荷物はなく、まさに「人生のすべて」を、そのなかにつめ込みました。

「それでたりるの?」と周りから驚かれましたし、正直なところ、私自身も少し不安でした。

でも、実際に海外で暮らし始めてみると、不思議と困ることはなく、むしろ今は身軽でいることの心地よさを味わえるようになったのです。

ただ、どんなに気をつけていても、3年同じ場所で暮らしていれば少しずつ荷物は増えていきました。

服も日用品も「見つけたときに買っておかないと、次は手に入らないかも…」と、つい手が伸びる。そんな海外ならではの不安や油断も重なり、気がつけばじわじわとオーバー気味になっていました。

そしてこの夏、スペインからジョージアへ移ることになり、私はもう一度「原点」に立ち返り、あらためて「もたない生活」、スーツケース1つにものを整理しました。

衣服は1種類「3つまで」がラク

何着かの服

今回、私が自分に課したのは「3つまでルール」です。ノースリーブは3枚、薄手の長袖も3枚、厚手の長袖、ワンピース、スカート、上着…どのジャンルも「3枚まで」と決め、その範囲で組み合わせながら着まわすことにしました。

唯一の例外は下着。海外では洗濯機がすぐに使えない環境もあるため、少し余裕をもって7枚。それ以外は、どんなに気に入っていた服でも「3枚だけ」と線を引きました。

仕分けのときには、まずお気に入りを前に並べます。そこから順番に手を伸ばし、残りはリサイクルショップへ直行。

たくさんの服

その際に心がけたのは、「買った値段や思い出を引きずらない」こと。「あのとき奮発して買ったワンピースなのに」「あの旅の思い出が…」と考え始めたら、気持ちは揺れてしまいます。

だから、あえてしんみりせずに、迷いなく紙袋へ。むしろ潔さを楽しむくらいの気持ちで行動しました。

こうして数を絞ってみると、意外なことに「残した服はどれも本当に好きなもの」だけになっていました。毎朝クローゼットをあけたときに、どれを選んでも安心感がある。選択肢が少ないから迷わないし、コーディネートもシンプルに決まります。

「もたない生活」とは、ただものを減らすことではなく、じつは「迷いを減らして暮らしをラクにする工夫」でもあるのだと気づきました。

日用品はポーチに入る分だけ

タンスの中

服と同じように、日用品や雑貨も思いきって必要最小限にしました。文房具も化粧品も薬も、まずは「これひとつ」と決めて持ち歩く。たりなければ現地で調達すればいい、そう考えるようにしたのです。

加えて、ここでのルールは、先にポーチを決めて、その中に入る範囲にすること。化粧品・洗面用具・薬・文房・コード類、お決まりのポーチは、滞在先でもそのまま引き出しに入れて利用しています。自然に整理整頓ができ、次の出発時も荷づくりが簡単です。

結局、どの国でも人々が暮らしているので、必ず似たようなものは売られています。でもそこで、全てに「上質さ」を求めないことは大切です。「ボールペンは、書ければいい」「ハサミは切れればいい」。そんなふうに割りきると、不思議と心がラクになります。

思い返せば、日本にいた頃の私は「同じようなものをいくつももっていた」気がします。
ペンもリップクリームも化粧品も、まだ残っているのに新しいものに目移りしてしまい、 「念のため」「きっと使う」「今のものよりよさそう」そんな気持ちで、気づけば棚の奥に似たようなものが並んでいました。

ところが、「これひとつ」に絞って暮らしてみても、驚くほど不便はありませんでした。むしろ「最後までちゃんと使いきった」という小さな満足感が、以前よりも大きな充実感をくれることにも気づきました。