涼しくなった秋こそ新しいなにかに挑戦のチャンス。そんなプレッシャーを感じたことはありませんか? カナダ在住のブロガー筆子さん(60代)によると、そんなときこそ大切なのは、だれかの基準ではなく、自分自身のペースで秋という季節を楽しむこと。今回は筆子さんに、肩の力を抜きながら、日常の中で見つけられる楽しみ方を教えてもらいました。
自分のペースで「秋」を楽しむコツ
この時季になると、「読書の秋」や「文化の秋」といったフレーズがあちこちで耳に入ります。季節を楽しむあと押しをしてくれる言葉ではありますが、「自分もなにか始めなくては」というあせりを感じることがあるのではないでしょうか。
50代以降になると、仕事や家事、親の介護などで時間も体力も限られているものです。この状況で「充実した秋を過ごさなきゃ」という言葉を耳にすると、プレッシャーを感じますよね。
暮らしを豊かにするのは、「どれだけやったか」ではなく「どう過ごしたか」です。周囲の声に惑わされず、自分のペースで季節を楽しむコツを紹介します。
自分の感じ方を大切に
秋になると、雑誌やSNSで、「秋に始めたい習い事」や「秋こそ挑戦のチャンス」といった特集や記事を目にするものです。「こんなこともあるよ」という提案のはずなのに、何度も見ているうちに「みんなやってる」「やるのが当たり前」という気分になります。
余暇の過ごし方は自由に選べるはずなのに、「私もなにかを始めなければ」と思い込み、まだなにもしていない自分に不安を感じるものです。
家事や介護で忙しいと、理想と現実のギャップが大きくなります。なにもできない状態に、「自分の努力がたりないせいだ」と感じて、自己嫌悪に陥(おちい)る人もいます。
他人の基準をそのまま使うのではなく、自分の本音を大切にすることが、秋をもっと自由に、心地よく楽しむ秘訣です。
●暮らし方は人によって異なる
新しい習い事、旅行、読書、スポーツ。どれも魅力的に感じられるかもしれませんが、見たことをそのまま鵜呑(うの)みにする必要はありません。
暮らし方の基準は人それぞれです。だれかにとって理想的な過ごし方が、今の自分にとっても心地よいとは限りません。年齢、体力、生活環境、気分は、人によって違い、同じ人でも時期によって変わりますよね。
若い頃は活発に動くのが楽しかった人も、今は静かな時間に安らぎを覚えるかもしれません。季節をどう楽しむかは、そのときの自分に合わせるべきです。
情報を見たら、一度立ち止まって考えてみましょう。「これは今の自分に本当に必要かな?」「やる時間はあるかしら?」と自問してください。
自分に合わないと思ったら、やらなくてもまったく問題ありません。季節の過ごし方は義務ではなく、自分で選ぶことですから。なにかを「できなかった」と感じるよりも、「自分で選ばなかった」と考えるようにしましょう。
なにもしない時間を楽しむ
周囲に合わせようとして、自分を追い立てるのではなく、なにもしない時間をあえてつくってみましょう。
なにもしないでいると、多くの人は罪悪感を覚えます。せっかくの季節なのに、なにもしないのはもったいないと考えてしまうからです。
でも、なにもやらない時間を過ごすことには、じつは大きな価値があります。
予定をつめ込みすぎずに過ごす時間があるからこそ、心と体が休まります。のんびり過ごすと、あわただしい日常ではわからなかった自分の気持ちに耳を傾ける余裕が生まれます。
なにもしていない時間はムダではなく、自分が望んでいる暮らしを知るチャンスなのです。静かな時間で気づくのは、「今の自分は休みを必要としている」というシンプルな事実かもしれません。