屋根裏部屋から始まったパリ暮らし

屋根裏部屋のキッチンとシャワールーム
屋根裏部屋のキッチン(右)とシャワールーム。供給される湯量に制限があるので、フランス人の入浴はカラスの行水
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フランスに来た当初から今の部屋に引っ越すまで、私たちが住んでいたのはトマくんが所有している屋根裏部屋でした。渡欧して初めて知ったのですが、フランス人は正社員になると、まず不動産を購入するのがごく一般的。20代でも未婚の若者でも買っているのだとか。

フランスでは不動産はほとんど値下がりしないので、不動産投資のことは「アンベスティドンラピエール(investir dans la pierre)」、直訳すると「石に投資する」、つまり手堅い投資と呼ばれています。若いときは収入が少ないので、まずは小さな部屋を買い、カップルになったらどちらかの部屋を貸し出して収入のたしに、子どもができたらもう少し大きな部屋を買うための資金にして…と徐々に資産を増やすのだとか。

彼も会社員になってすぐ、借りられるローン額が小さいなかで購入できたのが屋根裏部屋でした。屋根裏部屋を購入するのはだいたいが賃貸目的で、彼も住んだことはなかったそう。

日本で2年ほど暮らした彼とふたりでフランスに帰ることになったとき、すぐには職に就けないので不動産を借りるのも難しいだろうから、「あの屋根裏部屋を改装して住もうか」ということに。屋根裏部屋をDIYで改装しているとき、彼は自分のことを「メス鳥を迎えるための巣づくりに翻弄される鳥」にたとえていました。

日本と違う?パリの住まい事情

DIYした壁面収納
彼とDIYした壁面収納。クローゼットや、キッチン収納として使用

私たちが住んでいたのはパリの11区で、「ナシオン」という広場から徒歩10分ほどの建物です。パリ市内を環状に走っている高速道路が日本の山手線だとすると、その間を横断するようにセーヌ川が流れています。高速道路のサークル内がいわゆる「山の手」。西に行くほど高級住宅地になり、東に行くと庶民的な街並みになります。

東側は東京でいえば、下町の墨田区という感じでしょうか。そこにあるメインの大きい広場がナシオンです。日本では駅に近いほど家賃が高くなりますが、パリでは広場がその対象です。広場には必ず駅があるし建物も高級で治安もいいので、好立地になるというわけです。

またパリでは、ほとんどの部屋を別々の個人が所有している分譲マンションスタイル。日本の分譲マンションと同じように、修繕費が発生します。屋根裏部屋は所有する外観の面積も小さいので、修繕費もあまり高額にならないのがいいところ。ただし、その名前のとおり屋根の中にある部屋なので、雨漏りしたら真っ先に部屋が水びたしになってしまうのですが。

ちなみに、フランスの部屋といえば、「アパルトマン」という言葉を耳にしたことがある人も多いのでは。これは、マンションの中のひとつの住戸のことを指していて、マンション全体のことはバティモンと呼びます。ですので、日本のアパートのような感覚で「私たちと同じアパルトマンに住んでいるおばさんがね…」と話し始めようものなら、ルームシェアをしていると勘違いされてしまうのでご注意を!

ほかにも、Himiさんの著書『“ちゃんとしなきゃ”を手放せる心地いい毎日 パリ暮らし始めました』(KADOKAWA刊)では、ガイドブックにはのらない、ありのままのフランス暮らしが紹介されています。

“ちゃんとしなきゃ”を手放せる心地いい毎日 パリ暮らし始めました

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