「楽しそう」が心を動かす

黒田さんの仕事は、メディアの人に、まだ知らない本や著者に興味をもってもらって、「取り上げたい!」と思ってもらうことです。どうしたら相手の心を動かせるか。ここに格闘してきたといっても過言ではないそう。

そこで、本当に伝えたいことを届けるには、「楽しさ」や「ワクワク感」が鍵になります。

「このことを教えてくれたのが、『すごすぎる 天気の図鑑』の著者・荒木健太郎先生です。荒木先生がこの本で伝えたかったのは、じつは『防災』。『天気や雲の動きを観察することで気象災害に備えてほしい』という強い思いがありました」

人は、大きな災害が起こった直後は防災の大切さを気にするものの、時間が経つと忘れてしまいます。

「そこで先生は、『天気や雲の楽しさ』を伝えることに注力。楽しさを感じることで自然と空を見るようになり、その習慣が防災意識につながる、という発想ですね。実際に本の中で防災について触れているのは最後のページだけ。それでも、この『楽しさを先に伝える』というアプローチにより、『すごすぎる 天気の図鑑』はシリーズ累計50万部を超えるベストセラーになりました」

この本のつくり方を知り、「楽しさ」がメッセージを届ける力をもっていることをあらためて実感したそうです。

「僕が仕事で心がけているのも、まさにこの考え方。自分が本を読んで感じたことや実践したことを『楽しさ』とともに伝えます。すると、メディアの人も『楽しそう』と感じ、心が動く。それが、『この著者を紹介してみようかな』という行動につながっていく」

この考え方は、黒田さんが仕事をするうえでの指針としているだけでなく、「これからお店を始めたい」「PRして集客したい」などと人から相談を受けたときにも必ず伝えています。

「僕が大好きなカフェは、店員さんがいつも笑顔で楽しそうなんです。だから『どこでお茶しようかな?』と思ったとき、数あるカフェのなかでもついそのお店を思い浮かべてしまう。そういうお店は、お客さんが自然と集まるんです。だからこそ、『どうすれば働く人が楽しくなるか?』を考えてみたらどうでしょう。

もしカフェやレストランをオープンしたいなら、内装や味にこだわるのはもちろん大切です。でも、それ以上に大切なのは、お客さんに『このお店の人たち、楽しそうだな』と感じてもらうことだと思う」

これは飲食店に限りません。フィットネスジム、美容室、花屋さん…どんな業種でも同じことが言えるのではないでしょうか。

「『ここは楽しそう』と心が動くと、人は誰かに伝えたくなる。そして、そういう場所には自然と人が集まりますね。メッセージを届けるには、自分がだれより『楽しそう』であることが不可欠。それが非効率のルールです」

※ この記事は『非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方 』(講談社刊)より一部抜粋、再構成のうえ作成しております

非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方

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